「赤字額日本一の第三セクター鉄道」が激変…!いま全国のローカル鉄道関係者が「京都丹後鉄道」に注目している「納得の理由」
まずは「地元に利用されてこそ!」
「京都丹後鉄道」ときくと、数々の観光列車が印象に残る。これらが鉄道経営に果たした役割は後から触れるとして、「鉄道は地域に利用されてこそ」と飯島代表が胸を張る、地域に根差した鉄道会社としての取り組みに注目したい。 鉄道運営を受託した「WILLER TRAINS」に、経営改革・赤字の削減が求められていたことは、言うまでもない。しかし同社がまず取り組んだのは、すぐに結果を出せるコストカット・減便ではなく、「地元の利用者の利便性を上げる取り組み」であった。 高校や会社などにヒアリングを行い、増便を伴う主要駅のパターンダイヤ化(毎時〇分発)、各駅での列車待ち環境の改善など、「列車が来ない、分かりづらい、快適に待てない」環境の改善を優先させたのだ。 また、おもな利用者である各学校からはサービス・ダイヤに関する意見だけでなく、「車内で給食を食べる列車」(福知山高校附属中学校と合同)、「老朽化した切符回収箱の制作」(峰山高校機械創造科と合同)などの協業が積極的に提案され、実施に至っている。 こういった利用者からの盛んな提案・協力は全国の「元気な地方鉄道」の共通項でもあり、飯島代表も「鉄道を盛り上げるために、さまざまな取り組みを行ってくれているのはありがたいこと」と目を細める。 同時に、受託を受けた当初は年間で20~30人の社員採用を実施。今では、鉄道のノウハウを受け継ぎ働く若手社員を、当たり前のように見かけるようになった。もちろん、こういった地に足のついた経営ができたのも、上下分離によって「採算ライン」という経営上の重荷からある程度解き放たれているからであり、地元自治体も「委託したからには、思い切りやって!」とばかりに、民間企業であるWILLERへの応援をしがらみなく行いやすい。
「駅に着いても乗り換えナシ」問題の解決策
また、市街地から少し離れた駅を生かすための取り組みが「二次交通・ラストワンマイル(鉄道の次の乗り継ぎ手段)の強化」だ。地方のローカル線は鉄道とバスなどが連携しておらず「駅に着いてもバスもタクシーもいない」ような事態も起こりがちだが、「京都丹後鉄道」では地域最大の路線バス会社「丹海バス」などとも情報を共有しているといい、駅を降りても待たずにバスに乗れたり、しっかりとタクシーが待っている場合が多い。 さらに、WILLERが全国各地で展開するデマンドバス「mobi」を京丹後市・峰山地区に導入。地元のタクシー会社が運行を担い、約10kmほどのエリアに設けられた300ヵ所以上のスポットどうしを1回300円、月定額5000円で移動できる(予約制・相乗り)。 運転手さんによると、「駅-目的地」「自宅近く-病院」だけでなく、「学校帰り-カラオケボックス」などといった、想定していなかった利用が数多くあるとのこと。なお、飯島代表によると「mobi」は沿線の他の街でも導入を検討しているそうだ。 また、いまや「京都丹後鉄道」の代名詞となった観光列車(デザイン列車)は、経営移管当時の目標(年間4万人)を4倍も上回る「年間16万人」に利用されている。 飯島代表や社員の方に伺ったところ、これらの予約はクラブツーリズム・JTBなどがかなりの比率を占め、そこまで営業をかけずとも販売は順調だという。 人気の秘訣は、大手旅行会社が主力商品として扱えるコンテンツ力の高さ(普通の観光客にも訴求できる!)。さらに「次は天橋立、次は伊根の舟屋、ホテルやツアーもいかがですか?」という波及効果付きの提案力。まさにWILLERグループの面目躍如ともいえる強みだろう。
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