マクラーレン、“ミニDRS”禁止でも痛くも痒くもない? ライバルF1チームが望む戦闘力低下になり得ない理由とは
F1アゼルバイジャンGPで話題を呼んだマクラーレンのリヤウイングのデザイン。車速に応じてフラップが後方にたわみ、スロットギャップ(メインプレーンとフラップの隙間)が拡大していたことから“ミニDRS”と呼ばれるようになった。 【ギャラリー】RB、F1シンガポールGPに向けて特別”デニム”カラーリング発表 このマクラーレンのミニDRSは空気抵抗を低減し、直線スピード向上に寄与していたと考えられているが、翌戦シンガポールGPでFIAが“待った”をかけ、チームはこのデザインコンセプトの修正を求められた。 シーズン後半戦にかけて、マクラーレン、レッドブル、フェラーリによるF1コンストラクターズタイトル争いは白熱し、ポイント差はわずか。それぞれのマシンパフォーマンスに小さな違いが出ただけでも、最終的に大きく結果に影響する可能性もある。 マクラーレンのライバルたちはミニDRS問題でアドバンテージを早々に潰すことができたようにも見える。しかし実際には、シーズン終盤戦になっても最終的な結果はあまり変わらないだろう。
低ドラッグ仕様サーキット
マクラーレンのリヤウイングをめぐる騒動において理解すべきは、シーズン当初からマシンに搭載されていたアイデアでも、全てのレースで投入されるモノでもなかったということだ。 このミニDRSはサマーブレイク前のベルギーGPで投入されたアイデアで、低ダウンフォース/ドラッグのサーキットでのみ使用される予定だった。 このアイデアは、他のダウンフォース/ドラッグレベルのサーキットで活用されることはなく、低ドラッグ仕様のウイングとして特別に設計されたモノだった。 例えばシンガポールGPでマクラーレンはこのコンセプトを採用せず、高ダウンフォース仕様のリヤウイングを使用する。そのため、FIAの介入はマリーナベイ市街地サーキットでのチームのパフォーマンスに全く影響を与えない。 ベルギーGPからアゼルバイジャンGPにかけて使用されたリヤウイングの選択に関して、マクラーレンは公式文書で次のように説明していた。 「テンポが速いサーキットを想定して、今大会ではより空力負荷の少ないリヤウイングを投入し、効率的にドラッグを減らすことを目指した」 マクラーレンはこのウイングをベルギーGP、イタリアGP、アゼルバイジャンGPで使用。各レースのオンボード映像を見返すと、アゼルバイジャンGPで多くの人々が注目したのと同様に、DRSフラップのたわみが確認された。 ミニDRSを廃止に追い込んだマクラーレンのライバルたちにとって悪いニュースと言えるのが、このウイングが再投入される可能性があったのはラスベガスGPだけだったということだ。 ラスベガスGPの市街地コースは長いストレートと低速コーナーを繋いだ低ダウンフォース/ドラッグレベルのサーキット。他は中ダウンフォース(アメリカGP、サンパウロGP、カタールGP、アブダビGP)と、高ダウンフォース(シンガポールGP、メキシコシティGP)に分けられる。 つまりミニDRSの影響によるゲインがどれほどのモノであれ、マクラーレンからアドバンテージを奪うことができたのは、残り7戦のうちわずか1戦ということだけだ。