中国産スズメバチが九州に侵入 在来種、環境を守りながら繰り広げる攻防戦
日本列島で、最も凶暴な生物のひとつにスズメバチがあげられます。特にオオスズメバチは世界最大のスズメバチで、その攻撃性と毒性も世界クラスの危険度とされ、国内でも毎年刺傷被害で数十名の死者が出ています。 国内にはこのオオスズメバチ以外にも、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、キイロスズメバチ、チャイロスズメバチ、ツマグロスズメバチ、と合計7種も生息しています。世界に生息するスズメバチが22種とされていますから、日本はスズメバチの多様性が高い国といえます。 スズメバチはいずれも狩りバチであり、昆虫やほかのハチ類を好んで補食し、古くからミツバチの天敵として、養蜂業者からは嫌われている昆虫でもあります。 近年、日本のスズメバチのメンバーに新顔が加わろうとしています。それが外来種「ツマアカスズメバチ」です。
ツマアカスズメバチの恐るべき生産性
ツマアカスズメバチは、中国南部から東南アジア、西アジアにかけて広く分布する種で、特徴的なのが、越冬女王による営巣は樹木の根元で行われ、その後、働き蜂が増えてくると、樹木の高所に引っ越して、そこで巨大な巣をつくるという生活史をとることです。 この巣が、非常に巨大で、最大のものになると幅80cm、長さ2メートルを超え、その容量は600Lにも及びます。この巨大の巣のなかで2000匹を超える働きバチが活動しているとされます。さらに次の世代の担い手となる新女王も300~500匹生産されます。ちなみに日本のオオスズメバチの場合、1巣あたり働き蜂はだいたい200~300匹、キイロスズメバチで500~1000匹とされるので、ツマアカスズメバチの生産性はスズメバチ類の中でも極めて高いことが分かります。 これだけ、高い生産性を誇るのも、本種の生息域ではそれだけ天敵や競争相手が豊富に存在し、巣を維持して、生き残るために必要だからと考えられます。しかし、本種がいったん生息地と異なる異国の環境に移り住めば、このとてつもない生産性が、侵略性に直結することとなります。