若手社員は始業前に同じ課のメンバーのデスクを拭き掃除しなければならない…。 これは残業になる?ならない?
若手社員であれば、会社から説明されることに疑問をもつということはあまりないかもしれません。ただ、中小企業では昔の法律のままアップデートされず、労働基準法の改正に会社のルールが追いついていないということがよくあります。 今どき、「わが社は残業代が出ないから」とわざわざ念押しをするようなブラック企業はなかなかありませんが、会社独自のローカルルールで「なぜこんなことが続いている?」という悪い慣習が残っていることがあります。今回は、労働時間とは何か、残業時間とはどんなときかを正しく理解しましょう。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
労働時間にするには会社のルールを確認しよう
時給で働いているパートやアルバイトと異なり、正社員の労働条件は「月給○○万円。手当○○万円。朝の始業時間は何時で夕方は何時までが労働時間」と安定した条件で働いています。 この労働時間とは、「使用者(会社)から明示、もしくは黙示的な指示により業務を行う時間」のことをいいます。つまり、労働時間は、自分の勝手に決められるわけではなく、「使用者の指示」が必要です。 たとえ仕事が終わらず、残業したほうがいいと社員が判断しても、使用者側が社員側からの残業申請を了承せず、「残業は必要ない」と言ってしまえば、労働時間とみなされません。 社員からすると、たまった仕事を片付けるのに、「もう少し時間がほしい」「きりがいいところまでやってしまいたい」「電話やメールが来ない静かな時間に片付けてしまいたい」など、残業するための相応の理由があるケースもあるかもしれません。 ただ、使用者側も際限なく残業申請を認めてしまうと、企業全体で負担する残業代が膨れ上がることから認められないという事情があるのです。会社の就業規則にも、残業は「会社に申請する」など、残業するための手続きが定められているはずですので確認してみてください。
これって会社からの指示? それとも自分の好意?
表題のように、「始業前に同じ課のメンバーのデスクを拭き、掃除しなければならない」というケースだけでなく、働いている時間が労働時間かどうか迷うという場面は多いでしょう。 例えば、「始業時間に労働をすぐ始められるように、始業前の着用が義務付けられている制服に着替える時間」や「業務終了後の後始末としての掃除時間」「名目は休憩時間で、お客さまの訪問や電話があったときには即時対応にあたれるように待機している時間」などがあげられます。 これらの時間が労働時間に該当するかどうかは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるだけでなく、原則として「使用者の指示があったかどうか」がポイントです。 つまり、使用者側から「始業前に早く来て、デスクの掃除をすること」という明確な指示があるのであれば、時間外労働=残業時間といえるでしょう。ただ、この「指示かどうか」を判断するのは難しいことが多々あります。 会社と結んだ雇用契約には、「会社が定める始業時間より早く来ること」「始業前にはデスク周りの掃除をすること」などの明らかな記載があるわけではないでしょうし、会社のメールなどで指示を出した記録が残っていることもないでしょう。 今回のようなデスク周りを掃除する指示を出した方がどのような立場か分かりませんが、単に、これまでの会社の慣習を口に出しているだけということもあり得ます。それなら、単に「好意として」同僚のデスク周りの掃除をしているという捉え方もできますので、その場合は残業とみなされないケースもあるでしょう。