【このニュースって何?】トランプ氏が高関税を公言 → 自由貿易と保護貿易はどうちがうの?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
「アメリカ第一主義」と保護貿易
アメリカ大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、次期大統領に就任することになりました。トランプ氏は2025年1月20日から4年間の任期を務めます。 トランプ氏の就任は2017年からの4年間に続いて2度目になります。しかし、その就任に戦々恐々としている国は少なくありません。トランプ氏はアメリカ第一主義を掲げていて、国際協調は二の次という考え方をはっきりさせているからです。特に心配されるのが経済面です。トランプ氏は、外国からの輸入品に高い関税をかけると公言しています。具体的には、中国からの輸入品には60%、日本を含むその他の国からの輸入品には10~20%、メキシコから輸入する自動車には200%の関税をかけると言っています。 関税は輸入品が国境を越えて入ってくるときにかける税金のことで、それが高くなると輸入品の売値も高くせざるを得ず、売れにくくなります。今、日本からアメリカに輸出している乗用車の関税は2.5%ですが、これが10~20%に引き上げられると日本の自動車メーカーに打撃になることは明らかです。また、日本の自動車メーカーには、低関税でアメリカに輸出できるメキシコで生産しているところが多く、200%もの高関税がかかることになると、大打撃になります。 貿易についての考え方は大きく分けて二つあります。自由貿易と保護貿易です。自由貿易は関税をできるだけ低くするなどして自由に貿易できるようにしようというものです。一方、保護貿易は自国の産業を保護するため、関税を高く設定するなどして安い外国産品が入りにくくするものです。 自由貿易のほうがいいという考え方は、19世紀のイギリスのリカードという経済学者が唱えた国際分業の考え方を基本にしています。A国とB国があり、それぞれ毛織物とワインをつくっているとします。A国は毛織物をつくるほうが得意で、B国はワインをつくるほうが得意です。この場合、A国は毛織物をつくるのに専念し、ワインはB国から輸入したほうが国全体としては得になります。B国は逆にワインをつくるのに専念し、毛織物はA国から輸入したほうが国全体としては得になります。比較して相対的に優位にあるものは自分のところで生産し、優位でないものは輸入したほうが得だという「比較優位論」を提唱し、自由貿易は両国ともウィンウィンになれるとしました。 一方、保護貿易はすでにある自国の産業を守ろうとする考え方です。ワインづくりは不得手で毛織物づくりが得意なA国でもワインをつくって生計を立てている人たちがいます。その人たちを保護することを重んじたり、もしB国との関係が悪くなって輸入できなくなれば困ることを考えたりするわけです。そのため、A国でワインに高い関税をかけるなどして安いワインが入ってこないようにすると、それは保護貿易になります。