【このニュースって何?】トランプ氏が高関税を公言 → 自由貿易と保護貿易はどうちがうの?
「経済のブロック化」が第2次世界大戦の一因に
第2次世界大戦後、世界は保護貿易から自由貿易に向かうように努めてきました。それは、第1次世界大戦と第2次世界大戦の間の時期に、「経済のブロック化」と呼ばれる保護貿易が世界で強まり、それが戦争の一因になったと考えられたためです。 「経済のブロック化」とは、世界大不況をきっかけに世界がいくつものブロックに分かれ、ブロック内を囲い込んだ形の保護貿易がおこなわれたことです。イギリスやフランスやアメリカは自国の植民地や影響力の及ぶ地域にそれぞれの貿易圏を作り、それに対抗するようにドイツや日本も独自の貿易圏を形成しようとしました。こうしたブロック経済圏同士の勢力争いが第2次世界大戦につながったというわけです。 そうした反省から戦後すぐの1947年にGATT(ガット=関税貿易一般協定)ができました。自由貿易を進めるための国際機関で、日本を含む多くの国が参加しました。自由貿易が進むと、経済的利益を守ろうとするために戦争が起きにくくなると考えたのです。 GATTでは、ラウンドとよばれる多角的貿易交渉を何度もおこない、関税の引き下げなどの自由貿易を進めました。最後におこなわれたラウンドはウルグアイラウンドとよばれるもので、日本が聖域として輸入を禁止していたコメが関税化(関税を払えば輸入できる)された歴史的な交渉になりました。 1995年にGATTはより強固な体制の世界貿易機関(WTO)に衣替えし、2001年には中国も加盟するなどして自由貿易はいっそう進みました。ただ、WTOには166もの国・地域が加盟し、利害の調整がむずかしくなりました。そのためラウンドのような全加盟国の合意はできず、それぞれの国や地域が独自に交渉する経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)にゆだねています。日本が加盟しているものとしては、12カ国が参加する「環太平洋経済連携協定」(TPP)や、東アジアと大洋州の15カ国が参加する「地域的包括的経済連携」(RCEP)などがあります。 このように、戦後の世界は保護貿易から自由貿易に進んできました。アメリカも基本的には自由貿易を推進する側にいました。しかし、トランプ氏はちがいます。目先のアメリカの利益のためには、保護貿易は必要だと考えているようです。第1次トランプ政権の時には、中国と高い関税をかけあい、「貿易戦争」といわれました。それが再燃する恐れがあるだけではなく、日本などほかの国にも多大な影響が出る恐れがあります。高関税の公言は、トランプ氏が得意とするディール(取引)のひとつであってほしいと思います。ディールでないとしてもトランプ氏を支える高官たちがそのエスカレートを止める役割を果たしてほしいと思いますが、どうなるでしょうか。
一色清 ジャーナリスト