【試乗レポート】年間販売わずか70台、ホンダが新型燃料電池車「CR-V e:FCEV」に期待すること
■ ステアリングも加速も完成度は高い スポーティなクルマの場合、ハンドルの切り出し直後からクルマがよく曲がるといったフィーリングになるよう、電動パワーステアリングとサスペンションとのマッチングを開発段階で調整することが少なくない。 CR-V e:FCEVはスポーティモデルではないが、クルマの基本性能「走る・曲がる・止まる」が背の高いSUVとしては極めて高いレベルにある。そのため、市街地や高速道路でもクイックなハンドリングをイメージしがちだが、実際にはそうではなかった。 次に、動力性能についても、アクセル操作に対してモーターが過度に反応することはなかった。動力系の制御では加速の緩やかな伸び感を重視しているため、市街地走行では扱いやすい。一方、高速道路への進入時には、ドライバーが心の余裕を持てる程度の十分な加速をする。 NVH(音・振動・路面からの突き上げ)についても、しっかり対応できていることを再確認した。北海道のテストコースと比べると路面からの振動が少ない今回の走行シーンでも、その性能を実感できた。 こうしたCR-V e:FCEVの走行性能は、10月上旬に栃木県内のホンダ関連施設で試乗した次世代EV「ホンダ0 (ゼロ)シリーズ」に通じるところがある。 CR-V e:FECVの運動性能を総括するエンジニアは「ホンダとしての走り味を統一するのは当然のこと」と説明する。 また、スポーツモードにした場合、スポーツカーを想定したような音の演出が入るが、わざとらしさはなく、自然に受け入れることができた。
■ 年間販売台数はわずか70台 このようにハードウェアとしては完成度の高い電動車であるCR-V e:FCEVであるが、グローバルの年間販売台数は年間550台で、そのうち日本向けは70台にとどまる。 ホンダによれば、今回試乗した11月上旬現在、国内での受注数は約60台。その半分が新車販売店向けの試乗車で、残り約30台の内訳は法人と個人が半分ずつという。 扱う販売店については、その地域周辺に水素ステーションがあることが前提として、基本的に販売店側から販売の希望を出してもらう形となっている。 今回の試乗でも、神奈川県川崎市内の水素ステーションに立ち寄ったが、外観はガソリンスタンドに近いものの、水素充填については高圧ガス保安法による様々な制約がある。 同法については、トヨタ「MIRAI」の量産が始まった2014年に改定されたエネルギー基本計画において段階的な規制緩和に踏み込んだ。 その結果、水素ステーション設置に関するコストも大幅に削減され、国が目指す普及数に向けて前進はしてきたものの、収益性を総合的に考えると水素ステーションに投資する事業者はいまだに限定的な状況だ。 燃料電池車と水素ステーションの関係については、当分の間、水素ステーションの普及と燃料電池車の普及における、いわゆる「鶏が先か、卵が先か」の議論が続くことになりそうだ。