ヤクルト3年ぶりV奪回のキーマンは塩見泰隆!必要不可欠な1番打者としての怖さ
【球界ここだけの話】この男が復帰しない限り、3年ぶりのV奪回は見えてこない。ヤクルト・塩見泰隆外野手(31)だ。7年目の今季は、5月11日の巨人戦(神宮)で一塁ベースを駆け抜けた際に左前十字靱帯(じんたい)と半月板を損傷。手術を受けた影響で31試合の出場にとどまった。 【写真】塩見とハイタッチしようとして空振りする高津監督 昨季も下半身のコンディション不良や試合中に発症した腰痛の影響で出場は53試合。直接的な因果関係は証明できないが、塩見がフル稼働できなかった2年はチームがリーグ5位と低迷した。逆に、リーグ連覇を果たした2021、22年。それぞれ140試合に出場しベストナイン、130試合に出場しゴールデングラブ賞受賞と活躍した。それだけチームにとって大きな存在なのだ。 ドラフト同期の主砲・村上もこう言っていた。「このチームは塩見さんのチームですから」と。俊足で守備範囲も広く、グラウンドを縦横無尽に走り回っているイメージだが、すごさはやはり打撃だろう。1番打者としてこれほど相手にとって嫌な打者はいないはずだ。 まずは積極性。投手にとって「入り」というのは慎重になるもの。記者も学生時代に「1球目」や「1イニング目」など始まりを大切にするよう教えられた。プロとアマチュアでは異なるだろうが、「1」がなければ「2」がないだけにやはり野球にとって「入り」は重要だ。 ただやみくもに振るわけではなく、高い技術も持ち合わせている。だから、安打にもなる。もし、投手が勝負を避けようとボールを投げ続ければ、勝手に四球になる。塁に出れば、足がある。塩見の足を警戒すれば、次打者への投球が甘くなる可能性が高まるだけに、あの積極性は大きな武器だ。 そして、勝負強さもすごさの一つ。21年の得点圏打率は・325。今季であれば、サンタナや長岡を上回るチームトップで、リーグでも5位の数字だ。1番打者というのは、塁に出てチャンスメークをすることだけが仕事ではない。下位打線がつないで作った好機を得点につなげる、ポイントゲッターとしての役割も大きい。特に9番に投手を置くセ・リーグでは、アウト重ねた場面で打席に回ってくることが多くある。一発で仕留めることは至難の業だが、そこでも高い能力を発揮してきた。 自身の活躍とチームの順位が比例していることには笑いながら「関係ないですよ」としつつも「去年もそうでしたけど、迷惑をかけているとは思っているので、毎年頑張らなきゃと思います」と責任を痛感。21、22年はともにシーズン600得点を超えていた。やはりV奪回には塩見の復帰が必要不可欠。背番号9が帰還したとき、頂点に駆け上る号砲が鳴る。(赤尾裕希)