日経平均4万円を「バブル」と騒ぐのは論外…「新NISAデビュー」の投資初心者がいま絶対にやってはいけないこと
■投資の勉強法は「やりながら知識を蓄える」 【森永康平】澤さんも資産運用はされているのですか? 【澤円】以前は、もう自慢できるくらいなにもやっていませんでした……(苦笑)。僕はサラリーマンを長く続けてきたので、勝手に給料が入ってきてお金が出ていって、それでも生活できているということで投資のニーズを感じることがなかったのです。 でも、4年前に独立したことで、自分の収入は誰かが保証してくれるわけじゃないし、源泉徴収も勝手にされるものではないとなると、「無知のままではいられないぞ」と思い立ち、少しずつお金に関して勉強をするようになりました。そうしていまは、分散投資をやっています。 【森永康平】実際に投資をはじめたことで、投資に対する見方は変わりましたか? 【澤円】たとえ話としてよく使われますが、「競馬は賭けないとただの馬のかけっこ」という話とまさに同じです。賭けるからこそきちんと馬を見て分析しようと思うように、投資を実際にはじめたことで、投資についてよりきちんと学んでいこうと思えるようになりました。 【森永康平】知識を積み上げてからはじめるのではなく、やりながら知識を積み上げるということですよね。これは、わたしが投資の未経験者にいつも言っていることでもあります。日本人は基本的に真面目ですから、多くの人がしっかりと勉強してから投資をはじめようと考えます。でも、それだとたいていはじめる前に挫折してしまうのです。 500円や1000円という少額から投資をはじめられますから、まずはやってみる。すると、「1円でも損をしたくない」と考えるのが人間なので、「どうすれば損をしないだろう?」「どうして株価って変動するのだろう?」と疑問を持ち、勉強するつもりはなくとも勝手に勉強するということになるのです。
■初心者はレバレッジはかけてはいけない 【澤円】これからインフレ傾向が続く可能性が高いといわれるなか、投資によって自らの資産価値を守っていく必要があるということはよくわかります。しかし、投資にはリスクもつきものです。投資をするにあたって、初心者がやってはいけないことを教えてください。 【森永康平】レバレッジをかけるという手法です。レバレッジ(Leverage)とは「てこの原理」という意味で、投資の世界では「小さい資金で投資効果を大きく上げる」といった手法を指します。例えば、100万円しか持っていないのに300万円分の投資ができるといった金融商品もあるのです。 この投資がうまくいけば、もちろん効率よく稼げます。投資資金が100万円しかないのに300万円分の投資をするのですから、本来稼げるスピードの3倍早く資産を増やせるわけです。 でも、これは逆もまたしかりです。100万円しか持っていないのに300万円分の投資をするのですから、損をするときも損失が3倍になる。そのため、短期間で資産を失うこともあたりまえのように起こります。とにもかくにも、レバレッジはかけないこと。これだけは、初心者の人に強くお伝えしたいですね。 ■家計簿アプリで毎月の収支を把握する 【澤円】投資をはじめる前には、投資の考え方や手法を知る、またはマネープランを立てるなど、それなりの準備も大切かと思います。準備段階でやっておいたほうがいいことはありますか? 【森永康平】初心者向けとなると、まずなにより自分のお金の流れを把握することでしょうか。「老後資金が足りるか不安だ」という人はたくさんいますが、実はそういう人のなかにも毎月の収支すら把握していないケースがよくあるのです。それを認識できていなければ、将来必要な資金、その資金をつくるために投資にあてるべき金額といったマネープランも見えてきません。そこで、家計簿アプリの活用をおすすめします。一度クレジットカードや銀行口座などを紐づければ、自動的にデータを収集して勝手にお金の流れを可視化してくれます。 【澤円】これも、時代の流れによる変化ですね。投資をしなければならない時代になったと同時に、テクノロジーの進化によって投資をしやすい時代にもなりました。いま、投資をはじめない手はありませんね。 ---------- 森永 康平(もりなが・こうへい) 株式会社マネネCEO、経済アナリスト 証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。その後2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、AIベンチャーのCFOも兼任するなど、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)、『つみたて投資の教科書』(あさ出版)など多数。 ---------- ---------- 澤 円(さわ・まどか) 圓窓 代表取締役 1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。 ----------
株式会社マネネCEO、経済アナリスト 森永 康平、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟 文=清家茂樹