「男と女、どっちがつらい?」そんな不毛な争いはやめて【作家アルテイシアに聞いた】
30年前の日本にもセカンドレイプに怒る女性がいたんです
私が高校生のとき、テレビで聞いた田嶋陽子さんの言葉をよく覚えています。当時、ローマで日本の女子大生たちがレイプされる事件があって、マスコミは被害者を激しくバッシングしました。それに対して田嶋さんは、「女子大生がチャラチャラしているというけど、いくら鍵をかけていないからって人の家にドロボーに入ってもいいの?やっぱり悪いのはドロボーでしょ?責められるのは鍵をかけ忘れた人じゃないでしょ?」と怒っていました。 30年前の日本にもセカンドレイプに怒る女性がいたんです。この田嶋さんの言葉がなければ、私も性被害に遭うのは女性のせいだと刷り込まれていたかもしれません。差別は大抵悪意のない人がする、という言葉があります。差別は優しさや思いやりではなくならなくて、正しい知識を学ぶ必要があるんですよ。
小さなことから、ジェンダーギャップを埋めていく
――ジェンダーギャップ・ランキングを見ても、日本はジェンダー後進国です。改善するために、私たちができることはありますか? アルテイシアさん:やはり知識を得ることが大切だと思います。ジェンダーやフェミニズムの本や記事や映像などを見て、それをいいなと思ったらSNSでシェアしてみるとか。SNSでシェアして応援することも立派なアクションなので、まずは自分にできることからやってみてください。一人一人の小さな声が集まれば大きな声になりますから。 あとはやっぱり政治を変えなきゃいけないので、選挙が大切ですよね。自分の選挙区の候補者をネットで調べて、選択的夫婦別姓や同性婚や性教育やクオータ制といったトピックに賛成か反対か?とか調べてみると、誰に投票したいかわかるんじゃないでしょうか。 「最近は窮屈な世の中になって生きづらい」と嘆くおじさんは、「昔は人を踏みつけても怒られなくてよかったな~」と言ってるんですよ。昔は踏まれる側が声をあげられなかっただけなんです。「昔はおじさんが気軽にお尻を触ってきてよかったな~」って懐かしがる女性は見たことないですよね。 挨拶がわりに胸を触ってくるようなおじさんが駆逐されたのは、「セクハラするな」と声をあげてきた女性たちのおかげ。いま私たちが進学して就職して投票できるのも、ピルを服用できるのも、権利を求めて活動してきたフェミニストたちのおかげです。フェミニズムの恩恵を受けていない女は一人もいないし、そこにフリーライドしたくない。そんな思いから、私は「オッス、おらフェミニスト!」と宣言しています。