センバツ高校野球 日大三島、好機逃す 「聖地一勝」夏への課題 /静岡
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は大会第3日の21日、1回戦3試合を行い、県勢の日大三島は金光大阪(大阪府)に0―4で敗れた。センバツに初出場し初戦を突破した1984年以来の甲子園での勝利はならなかった。 日大三島は初回に3点を先制された。だが主戦の松永は二回以降、持ち味の制球力を取り戻して凡打の山を築き、98球で完投した。打線は五回、四球や内野安打などで2死満塁とし、この試合最大の好機を作ったが後続を断たれた。【深野麟之介】 ◇選手に贈る生演奏 〇…今大会は3年ぶりにブラスバンドによる生演奏が復活した=写真、深野麟之介撮影。日大三島の約30人の吹奏楽部員も、一塁側のアルプス席から気持ちのこもった演奏を選手たちに届けた。 吹奏楽部は2月以降、本格的に応援練習を行ってきた。定番の曲に加え、地元が舞台となった今季のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のオープニング曲も取り入れた。顧問の石館薫教諭(41)は「演奏ができることも、スタンドから応援できることも、当たり前じゃない」と、部員に言い聞かせてきたという。 試合はリードされる展開になったが、部長の宇井虹南(にな)さん(3年)は「日大三島は追い上げがすごい」と、逆転勝ちを重ねた昨秋の戦いの再現を期待して試合を見守った。勝利はかなわなかったが「近いところから応援できるのは吹奏楽部の特権。迫力もあって楽しい」と充実した表情だった。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇また戻ってくる 日大三島 加藤大登(かとう・ひろと)主将(3年) 「自分が塁に出なきゃ始まらない」。四回1死走者なしの場面で代打に立った。後につなぐ意識だったが、金光大阪の先発・古川が初球に投じたスライダーに手が出てしまった。二飛に打ち取られ「自分で流れを作れなかった」。悔いが残る打席になった。 2021年8月、新チームの主将に就任した。永田裕治監督(58)からかけられた言葉は「鬼になれ」だった。練習でミスをした仲間には「ドンマイ」ではなく、「そのミスで負けるんだぞ」と厳しい声を浴びせた。「仲間に言ったなら、自分もできなくてはいけない」。自分自身にもプレッシャーをかけた。 「レギュラーとそうでない部員の意識の差を埋めるのに苦労した」とも話す。自身も昨秋は控えに回る試合が多かった。まずは自分が率先して朝練習や自主練習に取り組む姿を見せ、全部員が分け隔てなく一緒に練習できる環境作りに心を砕いた。その結果、21年11月の明治神宮大会後には「全員が自主練に取り組むのが当たり前になった」という。 迎えたセンバツの初戦。「とにかく平常心で」と仲間に言い聞かせた。五回、2死満塁の好機で打席に向かった松永に対しては「無理に打ちに行くな。自分の(狙っている)ボールがきたら思いっきりスイングしていけよ」と声をかけた。しかし、甲子園は特別な場所。「練習通りにやることがいかに難しいかを実感した」 バタついた初回、低めの変化球の見極め、走塁を絡めた攻撃……。チームの課題を挙げればキリがない。「またこの場に戻ってきたい」。夏に向けての再出発を誓った。【小林遥、深野麟之介】