われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
これからNAPACに求めるもの
最後にトラストが加盟しているNAPAC(一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会)の活動について、今後期待していることを伺った。 「これから業界的にはなかなか難しい状況になっていくなか、1社単体で何かをしようとしても難しい。そこで、NAPACのように団体としていろんな活動や働きかけをしていくことの重要性が高まると思っています。いろんな分科会があって参加させていただくのですが、様々な大きな動き小さな動きも含めて情報交換ができる場として、NAPACは非常に我々にとっても重要になっております。とくに法規制であったりとか、世の中の動きが変わるときなどは、NAPACには業界最大の団体として、フロントに立っていろんな動きをしていただきたいですし、会員の交流をもっともっと活性化させていただいて、一緒になってこの業界をどうやって盛り上げていくか考えられるようにしていただきたいと常々思っています。 以前はHKS、ブリッツ、トラストというと、3大メーカーということで、バチバチのライバルといったイメージがすごく強かったのは確かです。しかしここ3年ぐらいですかね、だいたい同年代の方たちが各社を引っ張っていくような立場になって、それと同時に業界の大変革期ということもあって、イベントなどでお会いしてもいろいろな情報交換をしたりなど、いまは結構交流を持っています。そこで皆さんとお話しして同じ意見なのは、パーツ、製品の部分に関しては、切磋琢磨して今まで通り良いライバル関係という形で業界を盛り立てていこう。とはいえ業界関係者としては、1社が頑張ったところでどうにもならない問題がどんどん出てきているので、業界全体一緒になって業界を盛り上げていこう、と。特にHKS水口社長とは、HKSさんが単独開催なさっている『HKS PREMIUM DAY』をもっと業界の団体、それこそブリッツとトラストも加えた3社、そして関連するNAPACの会員社にも参加していただいて、アフターパーツの一大イベントみたいなことに育てていき、もっと大勢のお客さんに来ていただこうと。例えばですけど、3社でデモカーを出して乗り比べていただくなどのそれぞれの特徴を一気に体験していただくような場を作って、まずはアフターパーツに興味を持ってくださる方をもっと増やして育てていけるといいですねと、会うたびにお話ししています。それにぜひともNAPACも一緒になってやっていただきたいと思っています。そしてこの業界をもっと熱く、もっと幅広いものにしていけると嬉しいですね」 * * * いわゆるエンジンによる自動車が特許を取得したのは19世紀末。クルマが現在のように庶民の手にわたるようになってから100年にも満たない。日本でクルマが文化として認められるようになるのは、まだまだこれからという感じではあるが、2000年代頃から欧州ではすでにヘリテージに対する高い意識が芽生えていた。BMWやメルセデス・ベンツなどのドイツメーカーにフェラーリやランボルギーニなどのイタリアメーカーは、自らのブランドのヘリテージを守るべく、古いクルマのレストアに手厚い。ベントレーやジャガー、アストンマーティンなどの英国ブランドにおいては、過去モデルをコンティニュエーションシリーズとして生産するほどである。そこには、クルマが使い捨てではない文化遺産という意識が通底している。昨今ではレストモッドというワードも頻繁に目にするようになり、シンガーなどがその筆頭といえるだろう。 そうした世界的な流れの中で、トラストが取り組む「グレッディ ファクトリー」は、まさしく日本におけるレストモッドの活動に近いものがあると思う。クルマのチューニングやカスタムは、まだ日本では一部マイナスのイメージを抱いている人も多いと飯岡さんは語る。そうした人たちの意識を変え、それがカルチャーとして浸透するためにも、トラストはいま、新たな試みにチャレンジしている途上である。グローバル企業でもあるトラストだからこそ、北米や欧州の車業界の動向をキャッチし実行に移しているとも言える活動は、クルマ好きならば誰しもがエールを贈りたいもの。今後のトラストの活動、まずは東京オートサロンに出品されるトヨタ「ソアラ」に注目である。
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