カプレーゼの拡大解釈、定期的なSNSバズも…モッツァレラチーズは家庭にいかに定着したのか?
■モッツァレラを家庭料理に定着させるまでの苦心、”一口サイズ”と”味付き”が契機に
発売当初の「フレッシュモッツァレラ」パッケージ(写真左)、カプレーゼの写真を添えた2007年当時のパッケージ(写真右) 1999年春、家庭用の「フレッシュモッツァレラ」が発売されると、「カプレーゼが家で食べられてうれしい」との喜びの声が寄せられた。しかし一方で、それまで馴染みのなかったモッツァレラを家庭料理として馴染ませることに苦労もあったという。 「外食で食べたことのある料理を『家でも作れる』と理解していただくことがなかなか難しく、塩やオリーブオイル等で整える味付けの調整も当時はハードルが高かった。『なんだか難しそう』と思われるお客様もいらっしゃいました。まずお家で簡単に作れると知らせること、そして家で作ってみたいと思っていただくことの2つが難しかったと思います」 ユーザーを啓蒙するために、レシピサイトでモッツァレラチーズを使った様々なレシピを紹介。また発売当初はチーズだけの写真を載せていたパッケージを変更し、2007年からカプレーゼなど料理の写真を入れるようになった。さらにスーパーの売り場では、トマトの旬の時期はカプレーゼ、冬の時期はお鍋など、季節ごとに訴求方法を変更している。 さらにモッツァレラの新たなバリエーションとして、2018年に、切る手間が要らないひとくちタイプの「ひとくちフレッシュモッツァレラ」を、2023年に、爽やかなバジル味の「バジルフレッシュモッツァレラ」を発売した。 「カプレーゼやサラダなどいろいろな料理にアレンジできるのがモッツァレラの良さですが、実際に調理する際、賽の目状に切っている方もいらっしゃいました。賽の目に切るのは大変ですし、『小さくしてほしい』と要望もあって『ひとくちフレッシュモッツァレラ』を発売しました。また『味付けをどうしたらいいのか分からない』という方のために、最初から味が付いた『バジルフレッシュモッツァレラ』を出しました。元々モッツァレラはクリスマスなどのイベント時、年に1~2回の登場頻度でしたが、『本当はもっと頻繁に食べたい。でも家で作るのは大変そう』という方が多くて。『ひとくちフレッシュモッツァレラ』は切る必要もなく、サラダに乗せると見た目も可愛いです。お子様からお年寄りまで召し上がっていただきやすいサイズで、一気に食べる機会が増えたようです。今このひとくちタイプが市場の約4割まで成長しています」 これらを振り返った時の転換点として、「コロナ禍」で家庭料理へのとらえ方が変化したことが大きかったと伊佐地さんは分析する。 「コロナの時期は外食ができない分、食卓にエンタメ要素が求められました。その要素を満たすものとして、洋食訴求だけではない広がりも見られました。例えば冬だったらモッツァレラ鍋。伸びるチーズが楽しく、トマト鍋やキムチ鍋ともマッチしました。韓国のトレンドも追い風になり、チーズダッカルビやチーズハットグ、チーズボールなどの韓国料理まで広がり、多くの皆様に受け入れていただけたと思います」