【中国揺すって実を得ようとするイタリア】メローニ政権の狡猾な対中政策、「一帯一路」脱退から首脳会談への思惑とは
7月末、イタリアのジョルジャ・メローニ首相が中国を訪問した。周知のようにイタリアは、2019年から中国が提唱している「一帯一路」構想に、主要7カ国(G7)メンバーとしては唯一加入していた。しかし22年10月、右派ポピュリスト政党である「イタリアの同胞」を率いるメローニが政権を獲得すると、23年には対中関係の見直しに着手し、「一帯一路」からは期待したほどの成果を得られていないとして、同年10月には同構想から脱退した。また、欧州連合(EU)による対中政策の強硬化に対しても、表面的には特に反対することはなく、EUやG7の枠組みや方向性の中において、無難な対中外交を展開してきた。 しかし今回の訪中からは、メローニ政権のとってきた対中政策には、実は隠れた意図があったことを、いまさらながら明確に確認できる。メローニの訪中に話を戻せば、28日には李強首相と会談しており、各種の協力関係を推進することで一致している。この後、記者団には「両国関係の局面は変化し、再びの始動を迎えた」と述べている。 そして翌29日には、習近平国家主席と会談した。そこではまず習近平から、中国の対EU関係におけるイタリアの役割への期待が述べられた。その上で、「両国関係には重要な相互発展の機会がある」、「シルクロードの精神を守って、東西交流を続けるべき」との発言があった。 このロジックは中国が、ある集団の中の一国を相手にするとき、これを懐柔して切り崩す際に、よく用いるものである。そして、その後に相手が欲している実利を「みやげ」として大きく提示し、自国の鷹揚さを示すというのが、いつものパターンである。 この多分にもれず、習近平はメローニに対して、自国への投資を歓迎すると同時に、イタリア産品の輸入拡大の意向を表明した。もっとも後述するように、イタリアが喉から手が出るほど望んでいる、中国の電気自動車(EV)産業による大規模投資を念頭に、中国企業にはイタリアにおいて差別のないビジネス環境が提供されることを望む、とも述べて釘を刺している。