【中国揺すって実を得ようとするイタリア】メローニ政権の狡猾な対中政策、「一帯一路」脱退から首脳会談への思惑とは
大樹を揺すって多くの実を得ようとするイタリア
これに対してイタリアは、今回の訪中の目的について、「両国間における貿易関係の明確な均衡化と、経済協力関係の強化」であることを掲げており、あくまでも実利外交に徹した。習近平との会談では、ウクライナ、中東、インド太平洋をめぐる国際情勢についても意見交換が行われたが、主要な課題はあくまでも二国間の経済関係であった。 メローニは習近平に対して、「EUと中国の関係において、イタリアは重要な役割をはたすことが可能である」と応じ、一方では両国間における著しい貿易不均衡を念頭に、「できるだけ均衡のとれた貿易関係を構築すべき」と強く主張している。
同時にイタリアは、低迷する国内経済を振興するため、中国からの投資を強く期待している。これに対して中国側は、イタリアをEUやG7を外交と経済の両面で切り崩す足掛かりとして利用しうることを意識しており、イタリアの期待に応える素振りを見せている。 こうした両国の思惑が合致することもあって、今回の訪中では両国間の産業協力覚書である「全面的戦略パートナーシップ強化の行動計画(2024~27)」が調印された。そこでは今後の3年間において、貿易投資、EV、再生可能エネルギー、造船、宇宙航空、AI、電子商取引などの分野で、積極的な産業協力を進めることが謳われている。 総じて言えば、昨年の「一帯一路」の脱退とは、メローニ政権によるしたたかな駆け引きの一端であったのではなかろうか。すなわち、ドラギ前政権の置き土産であった「一帯一路」に難癖をつけつつ、これを脱退する行動をとることによって、米国やEUが右派ポピュリストであるメローニ政権に抱いていた外交面での警戒心を逸らしたと同時に、中国に大きく揺さぶりをかけつつ水面下では秋波を送る。 これによって、「一帯一路」の枠組みに加入していた時よりも、さらに大きな利益を引き出そうとしているように見える。まさに大樹を揺すって、より多くの実を得ようとする、きわめて功利的な実利外交である。