東日本大震災から7年 復興のまちづくりに大切なものは何か
東日本大震災から3月11日で7年がたつ。津波によって甚大な被害を受けた東北沿岸地域では、復興へ向けた街づくりの中で「高台移転」や「防潮堤」といった言葉が常にキーワードになった。この間、こうした復興計画の策定やその進ちょくは各自治体や地域によって差が出ている場面もある。特に高台移転をめぐっては、住民の合意形成の難しさがクローズアップされた。復興のまちづくりに大切なものは何なのか。東北の被災自治体などにヒアリングを行ってきた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの副主任研究員、国友美千留氏に聞いた。 【動画】復興住宅「2%」漁港は「37%」……数字で見る3年目の「震災復興」
遅れる住宅再建
丸7年を迎えた震災復興の歩みは、住宅再建という観点でみると「遅れている」と国友氏は指摘する。 一般的に「高台移転」事業は、政府の「防災集団移転促進事業(防集事業)」に則ったもので、被災地域で住民の居住に適さないと認められた区域内の住民が集団で移転することを支援する制度だ。国土交通相の同意を得られれば、住宅団地の造成などに補助が得られる。復興庁の資料によると、計画されている防集事業は332件で、うち96%で造成工事が完了している(2018年1月時点)。 国友氏によると、住宅供給予定の時期でみれば、特に甚大な被害を受けた岩手県山田町、大槌町、大船渡市、陸前高田市や、宮城県気仙沼市、石巻市、名取市などは、2018年度以降の完了予定になっていて、地区によっては進捗に遅れがみられ、復興を妨げる要因になっているという。 防集事業での住宅再建に遅れがみられる理由としては、東日本大震災の被害が東北を中心に非常に広範囲にわたったため事業数が多いことや、大規模な高台造成と嵩上げ工事の影響、そして住民の合意形成の難しさなどを挙げる。 復興まちづくりの中では、いくつもの合意形成をしなければならない。防潮堤の建設、高さ、嵩上げの実施、高さ、移転場所、移転先のまちづくり……。特に、三陸の美しい海とともにある地域の多くでは、防潮堤によって「海が見えない」ことに対する不安が大きく、いまも調整が続いている地区があるという。 実際の工事の面でも障壁がある。防潮堤の高さは津波の高さに応じて決まるが、それはどのレベルの津波まで想定するかで変わる。そして、防潮堤の高さが決まらないと地面の嵩上げの高さが決まらないため、その上の住宅も建てられないというスパイラルに陥るのだ。また、嵩上げを前提にした場合、造成が入るためその分、着工が遅れてしまう。 合意形成の面でも難しさがある。「行政側が人口減少に向かう今後の人口動向を見据え、広範囲な街づくりに向けてコミュニティを一つに再編するやり方もあるが、基本的には既存コミュニティごとのままにすることが多いので、その分、合意形成に人とお金と時間がかかる」。