東日本大震災から7年 復興のまちづくりに大切なものは何か
被災地は「未来の姿」
被災後の迅速な復興に向け、国友氏は各地の復興事例をもとに、「事前に地域性を反映しながら復興する視点を考えておくとスピードアップできるのでは」と提言する。ハードのまちづくりでよく用いられる「事前復興」という考え方で、「大規模災害を想定して、事前にどんなまちに復興するのか、被災後の再建イメージを予め住民に提示して、共有しておくことが重要」。 こうした動きは、南海トラフ巨大地震で津波被害が想定される和歌山県で、既に実行に移されている。今後、県内の市町村で復興計画の事前策定が一斉に進められる。また、国では、南海トラフ地震対策特別措置法に基づき指定する139市町村の「津波避難対策特別強化地域」において、事前の高台移転に対する補助も特例として認められた。静岡県沼津市の内浦重須地区では、事前の高台移転が決められている。 国友氏は「震災は既存社会の課題や傾向を強める」と指摘する。「被災地は、被災してない地域の未来の姿であり、私たちが通る道。被災地での課題解決は、その後の私たちの社会のあり方に映し鏡。都市部のコミュニティが効力を失いつつある今、被災地コミュニティの『これから』は、あらゆるコミュニティの希望になる」。
《取材協力》 国友 美千留(くにとも・みちる) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 防災・リスクマネジメント研究室 副主任研究員。阪神・淡路大震災で被災し、大学・大学院で災害復興過程を社会学的・心理学的側面から分析・研究。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、当社入社。防災対策・防災計画、復興政策を主として、幅広く地域振興に従事。災害文化構築に向けて、国の政策、自治体政策を中心に調査・提言を行う