本田美奈子.さんが遺した想いとは 早見優と半崎美子に聞く
「本田さんの想いが曲を書かせてくれた」半崎
一方で現在40歳の半崎は本田さんとは会ったことがなく、映像を通じてのイメージしかなかっただけにこの曲を作る機会の貴重さを噛み締めたと話す。 「このお話がなかったら『地球へ』という散文にふれる機会は今後もなかったかもしれません。曲を通して本田さんの地球環境に対する想いを伝えて行くことが可能になるのならこんなに嬉しいことはありません」 同曲は白血病などの難病に苦しむ患者を支援する活動を行うNPO法人「LIVE FOR LIFE」により毎年開催されてきた本田さんのチャリティーコンサートのテーマ曲として作られ日本語、英語のほかに合唱バージョンもあるという。コンサート自体はコロナ禍で開催できないが曲は11月6日から配信される。曲を作るに際しては考えたことも多かったようだ。 「散文を読み始めて本田さんが地球環境にすごく危機感を持っていらっしゃったことが伝わってきて、地球の未来を憂慮しているような意味合いのメッセージが感じ取れたんです。なので曲もいま生きている方々に何か問うような、環境破壊に対して警鐘を鳴らすようなものを書いたほうが良いのかと思ったのですが…さらによく読むと何気ない日常、本当にささやかな幸せを本田さんはすごく大切にされていて、そこがコロナ禍にある私たちにも響くものがあると感じたんです。本田さんが日常感じ取っていた繊細な思いがつづられていたので、この想いを『どうやったら形にできるかな』と考えました。それで書き始めてみると、私が書いているんですけど私が書いている気がしない…本田さんの想いが曲を書かせてくれているような気持ちを感じました。地球を守るということではなく私たちは地球に守られていて地球の一部なんだな、との想いを強くしました」
当たり前のことが当たり前にできる幸せ
早見は、本田さんのメッセージを半崎が曲という形にしたところに特別な価値を感じているという。 「2年前はマスクをして距離もとらなければいけない世の中がくるなんて誰も想像していませんでしたよね。でも世界中がこうなって思ったのは、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではなかったんだな、と。友だちと顔を近づけてひそひそ話をしたり、食べ物をシェアすることも『あっ、出来ないんだ』って。何も考えずに当たり前のことが出来るのってすごく幸せだったんだなと思います。でも、この状況になったがゆえにもう一度自分の生活や行動を考え直す機会があるんですよね。自然が綺麗だって思ったことは誰でもあると思うのですが、それが危機に晒されているんだと真剣に考えた時に美奈子ちゃんのメッセージと、優しく語りかけるような半崎さんの歌詞や曲が今だからこそ大切なのかなって思います」 本田さんが闘病中につづった散文には、多くの人たちに命のメッセージを伝えていきたいという想いがにじんでいる。それが曲として世に出る。本田さんは「生きている」。 (写真と文・志和浩司) ■早見優(はやみ・ゆう) 3才から14才までグアム、ハワイで育つ。14才でスカウトされ82年「急いで!初恋」で歌手デビューし第24回日本レコード大賞で新人賞を獲得。「夏色のナンシー」、「PASSION」などのヒット曲がある。以後バイリンガルと国際感覚を生かしテレビ、舞台などで活躍。 上智大学比較文化学部卒業。2004年には親子で英語に親しめるCD「Let's Sing Together!」をプロデュース。子育てエッセイ「楽しむアメリカン育児」の執筆をする。16年には藤井隆氏プロデュースで21年ぶり新曲リリース。全6曲収録のアルバム「Delicacy of Love」から「恋のブギウギトレイン」が国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」のテーマ曲に起用。18年にはデビュー35周年記念アルバム「CELEBRATION」、写真集「サマーガール」発売。19年にはミュージカル「アニー」にミスハニガン役で出演。 20年10月にスレンダリーレコードより「RIGHT HERE RIGHT NOW 」をリリース。現在はNHK World「Dining with the Chef」やNHKラジオ「深夜便ビギナーズ」(毎月第3土曜日)にレギュラー出演中。 ■半崎美子(はんざき・よしこ) 北海道の大学在学中に音楽に目覚め、大学を中退し単身上京。パン屋に住み込みで働きながら曲を書き、17年間どこにも所属することなく全国のショッピングモールを回り歌い続けた。「ショッピングモールの歌姫」として数々のメディアで取り上げられ話題となり、2017年4月にメジャーデビュー。NHK「みんなのうた」4~5月の新曲に半崎美子が書き下ろした「お弁当ばこのうた~あなたへのお手紙」や「サクラ~卒業できなかった君へ~」などを収録した「うた弁」はロングヒットとなる。同年「第50回日本有線大賞新人賞」を受賞。 19年5月、「明日への序奏」が教育芸術社より発売の中学生の音楽教材に掲載される。 天童よしみさんへの楽曲提供で話題となった曲「大阪恋時雨」は、2019年、第70回NHK紅白歌合戦でも歌われた。