「スキャンダルこそ人間の本質」 ――文春と新潮のOBが語る、週刊誌ジャーナリズムの真実
総合週刊誌として60年以上の歴史を誇る「週刊新潮」と「週刊文春」。穏やかなイラストの表紙とは裏腹に、世間を騒がせ、社会を動かす記事を数多く送り出してきた。その二つの雑誌の来歴を取材した本が相次いで刊行された。これらの本の著者もまた新潮社と文藝春秋の出身だ。雑誌ジャーナリズムとは何か、スクープを取る秘訣とは。二人が語り合った。(文:ノンフィクション作家・河合香織、ジャーナリスト・森健、写真:田川基成/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
■人間は生まれながらにして死刑囚
昨年12月、『2016年の週刊文春』(光文社)が刊行された。昨今「文春砲」の異名を取る週刊文春の歩みを描いたもので、著者はノンフィクションライターの柳澤健さん(61)。今年1月には週刊新潮の来歴を描いた『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』(幻冬舎)が出版された。著者はノンフィクション作家の森功さんだ(59)。 ──創刊以来、「週刊文春」と「週刊新潮」はライバルとして競い合っていますが、漠然と感じていた両誌の違いが、著書を読むとはっきり浮かび上がってきたように思います。本を書いた狙いはどんなところにありましたか。 柳澤「世間ではスクープの『文春砲』がよく話題になります。ただ、今回は少し視点を広げて、2016年の『週刊文春』が、60年の歴史の中でも突出したスクープを飛ばし続けることができたのはなぜかという経緯を書こうと思いました。そこで1980年代後半に編集長として部数を伸ばした花田紀凱(かずよし)さんと、2016年当時編集長だった新谷学君という2人の編集長を狂言回しに立て、『週刊文春』60年と文藝春秋100年の歴史を書きました」 森「新潮社には、齋藤十一(1914~2000年)という『新潮社の天皇』と呼ばれた伝説の編集者がいて、『週刊新潮』『FOCUS』『芸術新潮』などを創刊しました。齋藤は文芸にも秀で、坂口安吾に『堕落論』、太宰治に『斜陽』を書かせ、松本清張や山崎豊子などを発掘した。まさに鬼才です。『週刊新潮』の編集長は別の人間でしたが、事実上の編集長は齋藤十一。取材記者もデスクも、みんな齋藤のほうを向いていた。そんな齋藤十一を描き、新潮社のことも書いていきました」