【オーストラリア】〔政治スポットライト〕トランプ人事、対中強硬派起用で豪に試練
トランプ次期米大統領が来年1月の第2期政権発足に向けた人事に着手し、オーストラリアの外交への影響が懸念されている。保守派の中でも、米国第一主義をうたう選挙スローガン「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(MAGA)」の忠誠派や対中強硬派が主要な国家安全保障ポストに就くとみられ、アルバニージー政権下の豪米関係において早くも試練となりそうだ。 外交を担う国務長官の有力候補として、極右のグレネル氏の名前が挙がっている。1期目のトランプ政権下で駐ドイツ大使を務めた際に、欧州の保守派に左派政策への対抗を呼びかけ、ドイツの外交筋を困惑させた経緯がある。全国紙オーストラリアンは、オーストラリアのウォン外相の外交手腕が問われそうだとしている。 国防長官には、中国に対し厳しい姿勢を取る元国務長官のポンペオ氏が候補に挙がっていたが、トランプ氏は9日(現地時間)、同氏を新政権で起用しない方針を示した。ただ、ほかの候補には1期目で国家安保担当大統領補佐官を務めたオブライエン氏など対中タカ派の顔ぶれがそろう。豪米関係の構築において、アルバニージー政権の対中関係改善努力と、米国の対中強硬姿勢の整合性が問われることになりそうだ。 ■野党、トランプ選挙戦略を模範に オーストラリアの野党保守連合(自由党・国民党)のダットン自由党党首は、5月までに行われる予定の連邦総選挙に向けてインフレ、経済、移民政策、労働者階級の不満に焦点を当てた選挙戦略を展開する方針だ。成功を収めたトランプ氏の選挙戦術を模範とし、米共和党の選挙専門家との連携を強化するという。 ダットン氏は、「米国での問題は、有権者が光熱費や住宅ローン、保険料を支払えず、家賃が上昇する中、政府が自分たちの声に耳を傾けてくれると思っていなかったことだ。オーストラリアで起こっていることと不気味なほど似ている」と指摘した。 オーストラリアの実業家、ラインハート氏は、連邦政府の形式的手続きや税制に対する反対運動を続けており、今回のトランプ氏の勝利を受け「オーストラリアはトランプ氏の政策を見て学ぶべきだ」と主張した。