【バレー】東亜学園高が春高のセンターコートに帰ってくる。ミラクルか、それとも? 鎮西高撃破の準々決勝で見せた確かな力
偶然にも準々決勝は“センターコート”に。「東亜学園のムードにできました」
佐藤監督が言うに「スタート地点では全国大会で勝負できる力がなかった」部員たちが、なぜ7大会ぶりの準決勝進出を決めることができたのか。それは、準々決勝が“センターコートだった”ことも一つは要因にあるだろう。 この日、準々決勝が行われたCコートは接戦が多かったため、東亜学園高が鎮西高と対戦するころには、周りのコートではほぼすべての試合が終了していた。 「部員たちへ試合前に『角度は違うけれど、センターコートだぞ』と伝えたら、部員たちはニヤニヤしていましたね。あそこでスイッチが入ったと思います」(佐藤監督) 加えて、大勢の応援が駆けつけたこともチームを後押しした。同時に行われる試合がなかったため、対戦相手の応援団を除くと、声援はダイレクトに届き、それも会場中に響き渡る。「リードされても、みんなが気持ちを前向きにしてプレーしていました。それはやっぱり応援の力があって、勇気をもらえたからです」とは菊池怜太キャプテンの言葉だ。 サウスポーエースの山田慶之輔も「周りのコートで試合があると、どうしても集中できないので。鎮西戦だけだぞ、と集中して、東亜学園のムードにできました」と振り返ったように、メイン会場の4分の1面、それでも唯一ゲームが行われている“センターコート”を彼らは存分に満喫し、勝利につなげたのである。
東福岡高(福岡)との準決勝は11日の第4試合(16時15分試合開始予定)
おもしろいのは、佐藤監督自身が準々決勝で、拮抗した試合展開にも関わらず点数を見ていなかったこと。その理由について「点数を気にすると結果に意識が傾いてしまうので、そうなれば選手たちの集中度合いやプレーの質が下がるのは明確でした。ですから、目の前の1本と向き合うように促して、『次は何をするの?』『レシーブだよ』と常に声をかけながら試合を戦っていました」と話す。これにはセッターの和田も「最後は気持ちでプレーしていましたし、『アタッカーに打たせる』『いいトスを上げる』だけを考えていました」と語っていたことから、準々決勝でいかに選手たちが集中力を切らさずにプレーしていたかがうかがえる。もっともそれが、「楽しみすぎました」(山田)という言葉が出てくるほどの好プレーを続々と生み出した。 きたる11日の準決勝でも、彼らは一つのボール、一つのプレーにフォーカスし、何より楽しみながらセンターコートを駆け回るに違いない。そこでは7日のダブルヘッダーで披露したようなミラクルの再現だってありえるかも? 和田が口にした「開智戦は実力、鎮西戦はミラクル」という表現を、菊池キャプテンに投げかけると満面の笑みを浮かべてきっぱり。 「いやぁ、2試合とも実力だと思います」 春高の舞台で、センターコートの切符をつかみとった。その実力は決して、ミラクルではない。
月刊バレーボール