この時代に「会社」で働くとは? 「ジェンダーギャップよりもジェネレーションギャップに課題」三井住友銀行副頭取工藤禎子さん
――マネジメントの醍醐味は何でしょうか。 工藤:チームを率いるようになってから、チームのメンバーがディールに成功して喜ぶ姿をみるのが楽しかったんです。それまでは、自分でディールをすることで手ごたえがあり、お客様の笑顔がやりがいだったんですが。 一度もディールを成功させたことがないと悩んでいた部下と一緒に取り組んで一度成功させると、次からは自分でどんどんアイディアを出して、自分で交渉して、時間を忘れ楽しそうに仕事をしていました。メンバーの成長をみて「マネジメントもいいな」と思ったんです。それに私が一人でディールをやるより、みんなができたほうがチームとしての仕事は大きくなりますよね。 ――自分より前に女性リーダーのロールモデルがいないという悩みはありませんでしたか? 工藤:リーダーに「正解」があるわけじゃないから。誰かと同じようにやらないと、務まらないということではないと思います。 ロールモデルがいなければ、「継ぎはぎ」でいいと思うんです。あの人のいいところ、この人のいいところ、それぞれ取り入れて、自分のやり方を見つけてやっていけばいいんじゃないかな。リーダーシップの発揮の仕方も千差万別でいい。 私は、メンバーの成長に喜びを感じましたが、何に喜びを感じるかもひとそれぞれです。もし、やってみて喜びがなかったらやめればいい。苦しみ続けてまでやらなくてもいいと思います。 それに、いまは誰もが出世や昇進に価値を置く時代ではなくなりましたよね。フォロワーという存在も大事ですし、フリーランスとして専門性をもって一人でビジネスもできる。 でもチャンスがあるなら、一回くらい引き受けてみたらいいと思いますいろんな経験をしたほうが人生が豊かになる気がするんですよね。
――いまは一段高い役職に就かれています。マネジメント層と、会社の代表権がある立場とでどんな違いがあるのでしょうか。 工藤:経営会議のメンバーですから、会社全体のこと考えなければなりません。2つの軸で考えています。まず、この会社を存続させること。そのためにはどうしたらいいか。もう一つは、社会のためになりたいということ。未来も必要とされる企業となるための種まきをどうやっていくか。 未来にどうつなげていくかを考えていると、ジェンダーギャップよりもジェネレーションギャップのほうが大きな課題があると感じています。若い世代は職業観が全然違いますから。 ――ジェネレーションギャップはどんなときに感じますか。 工藤:離職率が昔と比べて非常に高くなっていますよね。例えば、人生二毛作と考えていて、一つの会社にずっといるとは思っていない。お金をためたらアートの世界にいきたいとか、ある年齢以降は全く別の仕事をしたいと思っているが今の若い世代です。年功序列の終身雇用が会社の価値だと思っていない人も増えている。 そういう人はいま働いているこの会社は自分のキャリアにどう資するのか、と考えます。組織と個人がうまく対話しながら、お互いwinwinの関係をつくらないといけない時代になっていますね。フィットしなければ、個人は別の選択肢をとるでしょう。 ――いつかやめるかもしれない部下を上司は大事に育てることができるでしょうか。期待していた若い社員がやめてしまうのは、私はとても悲しいです。 工藤:本当に、本当にその気持ちはわかります。さみしいですよね。私も部下が辞めるのはショックでした。どこが悪かったんだろうと落ち込みました。