「花粉症にならないの?」「花言葉には詳しい?」 町の「花屋さん」に訊いた「頭を抱えてしまう注文」とは
肌荒れ、力仕事、冷えとの戦い
こうして市場から店に運ばれた花は、そのまま店頭に並べられるわけではない。 「花の余分な葉を落としたり、茎をカットして水につけたりする『水揚げ』と呼ばれる作業をしなければなりません。花の持ちに影響する非常に大事な作業です」 それに加え、前日に冷蔵庫に入れておいた在庫の花は紙で巻いたりしているため、開店前はその品出しやバケツの水換え作業なども行わなければならない。 開店後すると当然接客が始まるが、その間、花を宅配で届ける配送準備や、なかには花を直接現場に届ける「配達業務」をするところもある。 「ライブ会場・個展・宴会場などに届けたスタンド花の回収なども仕事。貸会場の場合、貸時間内の回収が徹底されている。翌日の朝一でも認められず夜の22時半~23時までの回収指定などもあるうえ、時間内に回収できない場合は次回以降、出禁になることも」 店の中では水の取り換えや花束の作成など、常に体を動かす作業が続く。 「常に水やハサミを使ううえに、花によっては鋭いトゲもあるので、1年中手はガサガサで傷だらけです」 「立ち仕事で重いものを持ち上げたりする作業も頻繁にあるので、腰を痛めたりすることもよくききます」 こうした過酷な労働条件のなかでも特に体調に響くのが「温度」だ。 「花に心地のいい温度は人間にとって寒く感じるため、年中冷えてはいますかね」 「冬場に水を使ったり、店舗が半分外に出ていることもあったり、冷蔵庫があったりするので、花屋さんは冷えとの闘いです」
商売敵は「花粉」
ここで1つ、個人的にしょうもないことが気になった。花屋は「花粉症」にならないのだろうか。 「あります。薬を飲むか気合いです。配達や仕入れでクルマのハンドルも握るので、眠くならないように注意しています」 「実際に私もミモザの花粉症を発症しました。どうしようもないのでマスクをする、手袋をする、他のスタッフに任せてなるべく触らないようにするなど、普通の対応をするしかないですね」 「花粉症に限らず、アレルギーなどを発症してしまう例も。花の種類や科によってアレルギーの有無が変わる場合が多いので、苦手な花にさわらないなどの対策をします」 しょうもないことばかり気になりはじめたので、もう1つ花屋は“花言葉”に詳しいのか聞いてみると、意外な答えが返ってきた。 「これは自分の体感ですが、花屋さんで花言葉を知っている方は少ないように思います。ネガティブな言葉には気を付けるくらいかと思いますね」 「むしろ、知りすぎていると逆に花合わせが難しくなる(ネガティブな花言葉が有名なものは使いづらくなる)ので、勉強しないようにしていました。ただ、『プロポーズには108本のバラ』など王道のものはみんな知っていると思います」 ちなみに108本のバラの値段は2~6万円ほど。恥ずかしながら、筆者はバラ108本がプロポーズの意味を示しているとは知らなかったので調べてみると、「108」で「永久(とわ)」と読むからだそうだ。 日本人はなんとも語呂合わせが好きである。 しょうもない話の極みで申し訳ないが、この話で思い出したのが渋谷の109だ。筆者が日本語教師をしていた頃、渋谷の有名なショッピングビルがなぜ109なのかを教えた時の外国人学生のハトが豆鉄砲を食らったような顔を思い出した(「109」で「東急(とうきゅう)」)。 一方、こうした花言葉に敏感な花屋ももちろんいる。 「弊社の周辺は大使館も多いことから、お祝い用途の花やお悔やみ用途の花が国ごとに変わります。そこの予備知識は必要です」
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