「花粉症にならないの?」「花言葉には詳しい?」 町の「花屋さん」に訊いた「頭を抱えてしまう注文」とは
日本には昔から生け花や花見など、花を愛でる習慣がある。しかし、自室に花を飾ったり、イベント以外で家族や友人に贈ったりする習慣がほとんどない。街中に花屋はあるが、あまり訪れることがないという人も多いのではないだろうか。今回はそんな身近にありながら実態が知られていない花屋について取り上げていこうと思う。 【写真】筆者がニューヨークで目撃した、地下鉄車内でもごく普通に花を持つ乗客の姿
切り花出荷量1位の都道府県
農林水産省のデータによると、国内の切り花の作付面積は年々減少傾向にあり、昨年は1万2710ヘクタール。前年に比べて260ヘクタール(2%)も減少している。その減少の原因として挙げられているのは、生産者の高齢化などといった労力事情による規模縮小だ。 他業種に違わず、花木業界にも高齢化の波が容赦なく押し寄せているというわけだ。
一方、全国で最も切り花の出荷数が多い地域を見てみると、意外にも「愛知県」。 昭和37年から60年以上にわたって花木の産出額が全国1位なのだという(2位:沖縄、3位:静岡)。 また、令和5年の産切り花類の出荷量は全国で30億2,800万本。そのうち39%が「菊」だ。花のみでいうと「ばら」「カーネーション」が続く。 では、こうした花を販売している街の花屋はどんな労働環境なのだろうか。
過酷な現場
店先の華やかなイメージからは想像できないが、花屋の労働環境は過酷になりやすい。 今回話を聞いた7名(現役と元経験者)が口をそろえたのが「長時間労働」だ。 例として紹介してくれた花屋の1日を紹介しよう。 05:00~08:00頃 市場へ仕入れ 09:00~10:00頃 開店準備 09:00~12:00頃 仕入れた花の水揚げ作業 10:00~13:00頃 手入れが終わった花を順次店頭に並べる 10:00~20:00頃 販売・花束やアレンジの作成・配送・配達など 19:00~21:00頃 閉店作業 モノを売る店ではどこも必ず「仕入れ」が必要になる。 花屋の場合、大手は仲卸に頼み、店を開ける前に届けてもらうところが多いが、個人経営の場合、基本的に切り花は月・水・金、鉢物は火・木・土に市場でセリがあり、必要な商品に応じて向かうという。 ちなみに、こうして市場でセリがある日を業界では「表日」、ない日を「裏日」と呼ぶのだそうだ。 「状態のいいものは早くいかないとなくなってしまうため、花屋によっては3時頃から市場に出向くという人もいます」 「新鮮な生花を常備したり幅広い注文内容に対応したりする ため、弊社は週5~6日市場へ仕入れに行きます」 最近ではこのような朝の負担を減らすべく、インターネットでの取り引きやあらかじめ市場と交渉して後ほどピックアップするという方法も増えてきているようだ。 一方、普段花を運んでいるトラックドライバーたちに「花を運ぶ苦労」について聞いてみたところ、「生き物」の長距離輸送は、非常に神経を使うとのことだった。 「北海道―関東・関西に切り花輸送しています。生産者が前日、もしくは朝に集荷場の選果場に持って来た花を積んで、次の日の夜までに市場に入れます。花は荷扱いを丁寧にしないと散ってしまうし、温度管理をしくじると枯れたり腐ったりします。自分で花の高さを見て箱内で固定したり、花びらなどが傷つかないよう気を遣って輸送します」
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