「V字回復企業」と低迷企業、トップの決定的差 日本企業に「強いリーダー」がいない根本理由
本書には書かれていませんが、従来の日本式経営に、フィサメィ氏を通じてアメリカ式経営が流れ込んできたことで、組織の機動力が上がった。それもまた、この20年の任天堂の飛躍の背景にあると考えられるのです。 ■日本企業に求められる「アメリカ的経営者」 国際競争を勝ち抜くには機動力が必要不可欠である。これは、日本企業が「失われた30年」で得てきた手痛い教訓でしょう。まだまだ実態としては追いついていないところがあるとはいえ、問題意識はだいぶ共有されてきていると思います。
日本企業は従来、ボトムアップ型ですが、機動力を高くするには、ある程度、トップダウン型の組織にしていく必要があります。トップが決断を下し、強いリーダーシップをもって下を従わせるくらいでないと、時代背景や消費者ニーズの変化に素早く対応していけません。いかに機動力の高い組織を作っていくかという点では、おそらく、こうしたリーダーシップの欠如が日本企業の最大の課題です。 ちなみに10年ほど前にOECDが行ったリサーチでは、中卒の日本人の国語力と数学力は、大卒のイタリア人・スペイン人よりも高いという結果が出ており、一般的な労働者の質は日本が一番高いとされています。たしかに基礎学力がある上に真面目で律儀で一生懸命、コロナ禍でリモートワークになったときも、日本の労働者の多くは、サボらずにちゃんと仕事をしました。
ところが、これほど勤勉な人たちが、出世してマネジメント側になった途端に「昼行灯」のごとく存在感を失ってしまう。日本の風土として「出る杭は打たれる」ことも否めません。みな口では「リーダーシップが必要だ」と言うのに、いざ誰かが少しでもリーダーシップを発揮しようとすると、こぞって足を引っ張るところがある。政治の世界でもビジネスの世界でもそうです。“日本のマーク・ザッカーバーグ”や“日本のビル・ゲイツ”が誕生しないのは、このように、強い意志を持った人がリーダーシップを発揮できる土壌に乏しいからでしょう。