「V字回復企業」と低迷企業、トップの決定的差 日本企業に「強いリーダー」がいない根本理由
ところが、バブル崩壊後の平成の時代ではコスト削減が推奨されるようになり、経費と一緒に人間関係も削られていきました。みな懐にも心にも余裕がなく、おまけに残業続きで、仕事の後に飲みに行く時間も元気もありません。朝、出社し、ひたすら自分の仕事をこなしたら、家に帰ってバタンと寝る。2000年代に入ってからこの傾向は強くなりました。 これには、効率化が図られたことで個々のタスクが明確になり、無駄・無用の仕事をしなくてもよくなったというメリットがありました。その反面、個人と個人が分断され、「困ったときはお互い様」「互いの弱点をカバーし合う」など血の通った社内の人間関係が失われるという事態が生じたのも事実です。
管理職の在り方も、昭和のころは比較的鷹揚で個人の裁量に任せるタイプが多かったものが、「鷹揚では業績が上がらない」とばかりに個々にノルマを課して尻を叩くタイプが増えた。かくして仕事は「チームワーク」から「個人の戦い」へと様相が変わったのが平成という時代でした。 しかし、それも今では見直され始めています。特によく耳にするのが「管理職の仕事」の変化です。個々にノルマを課して尻を叩くというマネジメントは今や効力を失っている。その代わりに、チーム内のコミュニケーションを盛んにし、メンバー同士の間を取り持つことで全員のやる気を高めるといった管理・調整役が管理職の主な仕事になってきているようです。
そうなると、必ずしも「仕事で実績を出した人」が優れた管理職になれるとは限りません。セールス・マーケティング部で実績を挙げた人を管理職に据えたところ、マネージャーの適性がないことが判明した。コーチをつけてトレーニングを試みるも、結局は会社を去ってしまった。これは本書で紹介されているエピソードです。昔から野球の世界には「名選手は名監督に非ず」という言葉がありますが、仕事も同様、プレイヤーとしての実務能力と、マネージャーとしての管理・調整能力はまったく別の能力なのです。