初代表の井手口はハリルJの救世主になれるのか?
昨年3月の就任から、数えること11度目の代表メンバー発表。いつもエネルギッシュにまくし立てるヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、ここまで特定の個人名を挙げて、絶賛したのは初めてだった。 「彼はずっと追跡している。ボールを奪うとこともフィジカルも伸びている」 「彼の最近の試合を見たと思うが、3つの素晴らしいゴールを決めた」 「彼は毎試合どんどん伸びている。ボールを奪ってからつなぐパスも、背後へのパスもいい」 「彼は美しいゴールも取るし、前にもいける。しかも20歳で、将来もある」 4日に東京・文京区のJFAハウスで行われた、11日のオマーン代表との国際親善試合(カシマスタジアム)、15日のサウジアラビア代表(埼玉スタジアム)に臨む日本代表メンバー発表。64歳の指揮官は数えただけで実に4度にわたって、25人の選手のなかで唯一の初選出となった「彼」ことMF井手口陽介(ガンバ大阪)を称賛した。 高校3年生へ進級する直前の2014年3月に、井手口はガンバ大阪ユースからいわゆる「飛び級」でトップチームへ昇格した。3年目となる今シーズンはJ1で22試合に出場し、プロ初ゴールを含む4ゴールをあげているが、軌跡を振り返ってみると今夏のリオ五輪がターニングポイントになっていることがわかる。 ブラジルへ渡る前までが10試合で先発が5度、プレー時間が592分だったのが、帰国後は初戦のヴィッセル神戸戦こそリザーブに甘んじたものの、20歳となった直後の8月27日の湘南ベルマーレ戦から日本代表経験をもつ遠藤保仁、今野泰幸とのボランチ争いに参戦。8試合連続の先発フル出場を射止めて、セカンドステージを終えた。 先発回数、720分を数えたプレー時間で、いずれも五輪前までの自分を超えた。何よりも9月17日の名古屋グランパス戦で元日本代表の守護神・楢崎正剛から奪ったゴールを皮切りに、10月15日の横浜F・マリノス戦で2ゴール、3日の川崎フロンターレとの最終節でもチームを逆転勝利に導く同点弾を決めている。 しかも、ゴールの内容が素晴らしい。名古屋戦はドリブルで攻め上がってから、右足でミドルを叩き込んだ。横浜戦ではペナルティーエリアのやや外側から左右両足で一発ずつ。そして、川崎戦ではボランチの位置から長い距離をフルスピードで走り、味方のシュートのこぼれ球をゴールポスト付近まで詰めて右足で押し込んだ。 特にそれまでデータになかった、利き足とは逆の左足で誰もが身動きができないほどの強烈な一撃を決められた横浜の元日本代表DF中澤佑二は、井手口ひとりにやられて2‐2で引き分けた試合後にこんな言葉を残している。 「彼は化けますよ」