初代表の井手口はハリルJの救世主になれるのか?
シーズンが開幕した直後から井手口に注目していたハリルホジッチ監督は、川崎との最終節を視察。その目で急成長ぶりを確認したうえで初招集となったわけだが、171センチ、71キロと今回呼ばれたボランチ勢のなかで最も小柄となる井手口にどこに魅せられたのか。 チームメイトの遠藤は「ゆくゆくは日本を代表する選手になる」と、こう続ける。 「もともと能力の高い選手でしたけど、オリンピックやJリーグの舞台で経験を積みながら、順調に成長してきていると思いますよね。球際の強さやハードワーク、ボールを奪う能力は彼の持ち味だと思いますし、その部分でチームにも大きく貢献しているし、焦らずに伸ばしていけば十分に(世界と)戦える選手じゃないかなと思います」 ゴールもさることながら、球際における攻防でまさに異次元といってもいい「強さ」を発揮して、味方のゴールに結びつけた試合がある。横浜のホーム・日産スタジアムに乗り込んだ、10月9日のYBCルヴァンカップ準決勝第2戦。1点を追う後半18分だった。 右サイドからパスを受けた井手口は、ダイレクトでゴール前に攻め上がっていた右サイドバック・米倉恒貴へ縦パスを入れる。もっとも、横浜の守備陣も縦パスを警戒していたのか。左サイドバック・金井貢史とアンカーのパク・ジョンスの2人で挟み込む形でパスを遮断。こぼれ球を金井が支配下に収め、カウンターを発動させようした直後だった。 縦パスを出した直後に猛然とスプリントをかけていた井手口が、まるで猟犬のように金井へ襲いかかる。ハリルホジッチ監督が好んで口にする、フランス語で決闘の類を意味する「デュエル」で完勝したのは言うまでもなく井手口。金井はボールを失ったばかりか、体のぶつけ合いでバランスを崩して転倒してしまった。 「あの場面は(米倉さんに)ボールを落としてもらって、自分がそのまま受けようかなと。そうしたら自分の目の前にボールがこぼれてきたので、(攻守の)切り替えを速くしようと」 カウンターを遮断された横浜の選手たちの足は一瞬止まり、その間に米倉がヒールでMF藤本淳吾にパス。利き足とは逆の右足でゴール前へ放ったグラウンダーのクロスを、遠藤が鮮やかにゴール左隅へ蹴り込んだ。このとき、前へ出る姿勢をキープし、遠藤のすぐ横にまで走り込んできたのも井手口だった。 このあたりから、G大阪を率いる長谷川健太監督は遠藤をボランチからトップ下へ配置転換し、今野と井手口とでボランチを組ませる布陣に変更している。ともにボール奪取力に長けるボランチで相手の攻撃を遮断し、遠藤を経由させて、自由自在なアイデアのもとで攻撃を仕掛ける形で、年間総合順位を4位で終えた。