「99.5%の真空技術」でフードロスをなくす。インターホールディングス代表 成井五久実インタビュー
「真空食品」をグローバルスタンダードに
──現在の事業で一番難しい局面はどんなことでしたか? 技術が高くてもコストとオペレーションの問題を解決しなければ社会実装には至りません。 特に難しいのは資金調達です。現在は「スタートアップ冬の時代」と言われるほど厳しい状況。 資金を調達するために必要となってくる指標は「売上」と「営業利益」、「実績」ですが、ディープテック・テクノロジー系(科学的な技術革新によって社会に影響を与える)のスタートアップには、まだそれがない。 なので、社会実装のPoC(概念実証、アイデア・技術が実現可能かを検証する作業)で戦わなければなりません。 私たちの場合は、大企業とのPoCや今後の可能性に賭けていただくしかなかった…。ビジネス人生で一番の難局だったと思います。 ──どのようにして乗り越えましたか? メンバーのバックグランドや経験を信頼してもらい、そして大企業とのPoCを繰り返し、その数をKPI(重要業績評価指標)にしていただいて乗り切りました。 現在、大企業とのPoC は約20~30件。食品メーカー様へ弊社の真空パックを使った商品開発を提案しています。 さらに、先ほどの「真空発泡スチロール」も現在、物流業界に提案しているところです。 ──成井さんにとって、リーダーシップとは? これは子会社の社長を務めていた時に学んだことなのですが、「誠実である」ことだと思います。 顧客様に対しても、会社のメンバーにも、自分なりの誠実さで信頼関係を構築して、周囲を誤った道に導かないことがリーダーシップではないか、と。 ──この事業で目指すゴールをお聞かせください。 何よりもまず目指しているのは「真空特許技術でフードロスの社会課題を解決すること」。 具体的に行なっているのは、農業や漁業など一次生産者へのアプローチ。魚や肉、野菜などを真空パックにすると、これまで不可能だった輸送も可能になります。弊社の真空技術で「運べないために起こるフードロス」が解決できると信じています。 それ以外にも、小売店向け「真空量り売り機」の開発が進行中です。日本酒などの鮮度を保ったまま量り売りをし、小売店の商品廃棄率を防ぐ「エコな消費」を実現したい。 また、家庭用の真空パックの販売はすでにスタートしており、一般家庭内のフードロスもなくしたいと考えています。 弊社の真空商品で、「一次生産過程」「小売店」「家庭」で起こる3大フードロスを最適化すれば、世界全体のフードロスが減らせるはず。 そしてやがて、冷凍食品のように「真空食品」を世界のグローバルスタンダードにしたい。食料保存という観点で、真空が当たり前に採用される社会を目指したいと思っています。 この「99.5%の真空特許技術」で世界に大きなインパクトを残すべく、2024年1月から世界展開をする予定です。