F1ホンダ・折原伸太郎「今季はガラッと状況が変わった」レッドブルPU供給の舞台裏
【独立性の高いレッドブルチーム】 ーーやっぱりレッドブルはVCARBよりも精度は高いというイメージがありますが......。 まあ、そうですね(笑)。基本的にはどちらもそんなに外れませんが、実際に走ってみると、予想値と全然違うということがあります。すごく高い温度で走って、緊急的にカウルを開けて走るケースもありますね。 そういう判断をする際にも、チームのキャラクターがあります。レッドブルはファクトリーからのサポートが手厚いので、チーム側がファクトリーと相談して、開けるか閉めるかの判断はまずは自分たちでして、そのあとにホンダに対して「これでいいか」と確認する。問題がなければ、我々も「そうだね」と答えて、作業を進めるケースが多いです。 対してVCARBは、より早い段階からホンダに意見を求め、ホンダとより密接にコミュニケーションを取りながら決めていくことが多い。つまりチームとしての独立性はレッドブルのほうが高いと言えるでしょうね。 ーーということは、レッドブルよりもVCARBに対してのほうがホンダとしてやるべきことが多いんですね。 そうなりますね。会話の密度が高いとも言えますが、より現場での対応力が求められるとも言えますね(笑)。レッドブルは事前にしっかりと準備してきている。プランを事前に何パターンか用意していますので、たくさんの会話をしなくても「こうしようか」「そうだね」という感じで済んでしまいます。 VCARBは事前に準備してきたシミュレーションのデータが外れた場合、現場で一緒にデータを見ながら「どうしようか」と相談することが多いですね。 つづく 【プロフィール】折原伸太郎 おりはら・しんたろう 1977年、東京生まれ。ホンダF1第2期活動(1983~1992年)でのマクラーレン・ホンダの活躍を目の当たりにしてF1の世界に憧れ、大阪市立大学工学部機械工学科で学び、2003年にホンダ入社。市販車用エンジンの開発に携わったあと、ホンダ第4期F1プロジェクトに参画。イギリスの前線基地の立ち上げ、国内でのパワーユニット開発にあたり、2023年からトラックサイドゼネラルマネージャーを務める。
川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi