F1ホンダ・折原伸太郎「今季はガラッと状況が変わった」レッドブルPU供給の舞台裏
【ホンダPU供給の舞台裏】 ーー今シーズン、ホンダはレッドブルとともにビザ・キャッシュアップRB(VCARB)にもPUを供給しています。両チームのPUに仕様の違いはありますか? ホンダが供給するPUは基本的に一緒です。逆にチームごとに仕様を変えてしまうと、確認事項が増えてしまうので、そういうことはしていません。 たとえば、自分たちのマシンに理想的なエンジンハーネス(配線)の取り回しに変えてほしいとチームがリクエストしてくることがあります。でもそれをやってしまうと、ふたつの仕様を設定することになるので、スペアエンジンを共有できなくなりますので、オペレーションとしてよくない。 また、テストの時は本来パフォーマンスを上げることが目的ですが、仕様がふたつあると信頼性や機能確認などに時間を割かれ、性能を上げることに注力できなくなってしまう。そういったことを総合的に考えると、チームの要望を聞くよりは、お互いに話し合ってひとつの仕様にしたほうがホンダとしてもいいし、PUのパフォーマンスが上がれば結果的にチームとしてもいい。そういう形で了承してもらっています。 ーーそれでも車体は各チームのオリジナルです。たとえば、ラジエーターの配置などはチームによって異なりますので、サーキットによっては、「こっちのチームは冷えるけど、こっちのチームはあまり冷えない」というケースもあるんじゃないですか? そうですね。ホンダとしては基本的に、シーズンの頭に「これだけの冷却能力を要求します」と言って両チームにまったく同じ数値を出します。それをもとにチームは仕様を決めるのですが、実際にマシンを走らせてみると、冷え方に違いが出ることもたしかにあります。 そういう時は、カウルの開口部をもっと広げて空気を取り入れて冷やしてほしいと伝えます。でもチームとしては開口部が大きければ大きいほど空力性能が低下してラップタイムも落ちてくるので、それはやりたくない。 PU側は当然、水温や油温を下げたほうがパフォーマンスは向上するのですが、どこまで温度を許容して走らせるか。それは状況を見て決めていきますが、これ以上は絶対にダメ、信頼性を確保できないという温度はあるので、そういう時は開口部を広くして走ってもらいます。