日本人にもよく「わかる」…イギリス人はなぜ図書館を使わないのか、その「ミもフタもない理由」
イギリス(イングランド)の文化メディアスポーツ省 (DCMS) が調査会社Ipsosに委託した「図書館利用の障壁」("Barriers to library use Qualitative research report“)と題する報告書がまとめられた。そこでミもフタもなく語られる「図書館を使わない理由」は日本人にもあまりにもよく「わかる」ものだった――。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言 イングランドでは過去12ヶ月間(2022年4月から2023年3月)に公共図書館を訪問した成人の割合は24%(日本では2019年に国立国会図書館がインターネット調査を行っており、そこでは過去1年間に1回でも公共図書館を利用した人の割合は41%だったから、英国の方が低い)。 図書館を利用しない理由は「興味がない」32%、「特に理由なし」31%、「時間がない」18%。定量調査してもほとんど何もわからないアンケートの典型例のような回答結果になっている。 というわけでインタビューを通じて理由を掘り下げたのが、この報告書のキモである。
使わない理由――図書館のイメージが「古くて退屈」だから
英国でも図書館はもはや単なる本の貸出場所ではなく、コミュニティを担うものとして再定義されており、デジタル化や社会のニーズの変化に対応して、多様なサービスを提供するハブとしての役割を模索している。 たとえば健康相談、キャリア支援、デジタルスキル学習、子供向けプログラム、多文化イベントなどを行っている。日本でも、図書館もそうだし、図書館も入っている建物(体育館や展示室、音楽室、工作室、多目的室などが併設されていることが少なくない)で同様にさまざまな地域のイベント、講習などが行われている。 ところが英国でも「図書館ではいろいろやっている」という認知度がきわめて低い。多くの人々が図書館を「古く、退屈な場所」と捉えていた――特に18~24歳でその割合が高い。
子ども・若者が使わない理由――自分たちのライフスタイルと乖離している
英国では図書館が提供するアクティビティは大人か子連れ向けが多く、10代~20代が魅力を感じるようなものはそもそもあまり提供されていないようだ。 若年層は図書館を「自分たちの世代が利用する場所ではない」と認識し、自らの興味関心やライフスタイルと乖離していると感じている。 「本が読みたかったらネット書店や電子書籍でいい」 「学校図書館があるから地域の図書館に行く必要がない」 という意見もある(日本では逆に新設された公立図書館の設備が良すぎて古びた学校図書館が使われない地域もあるが)。 また、英国では読書や図書館利用が若者の間でステイタス、魅力的な活動として認識されていない。日本では読書に対して好意的な子ども・若者はこの四半世紀でどんどん増えているのでここは異なるところだ。 ただ、一定期間内に何冊を読んだか競うような昔ながらの読書チャレンジのようなものよりTikTok上のミームにチャレンジする方が注目を集めているのは英日どちらも変わらない。 多くの図書館のウェブサイトとソーシャルメディアは若者向けの情報量が不足し、デザイン的にも魅力がないとも指摘されている。視覚的に洗練されていて、ダイナミックで、情報が簡単にわかるウェブコンテンツが求められている。 デジタルサービスの拡充や若者向けの新奇なプログラム、ソーシャルメディアを通じた情報発信、快適で現代的な空間デザイン、などが必要だと書かれているが、これも日本でも同様だ。