歯ぐきの痩せ・下がりを治す「根面被覆(こんめんひふく)」はご存じですか? 治療期間や注意点も歯科医が解説!
根面被覆ではどうやって根面を歯ぐきで覆う? 治療による痛み・治療期間はどのくらい?
編集部: 根面被覆では実際に、どのような方法で歯ぐきの位置を改善していくのでしょうか? 金子先生: 根面被覆の方法は多岐にわたり、歯ぐきや根面の露出具合によって選択する術式が異なります。大まかにわけると、「口内のほかの部分から歯ぐき(粘膜)を切り取って、それを露出面に移植する方法」と「歯ぐきを移動させて、露出面を覆う方法」の2つです。 これらを単独でおこなうこともあれば、2つの治療法を組み合わせることもあります。 編集部: 1つ目の「歯ぐきを切り取って移植する」とは、具体的にどこから切り取って移植するのですか? 金子先生: 多くは上あご(口蓋)から粘膜を一部切り取って、それを歯ぐきが下がって根面が露出している部分に移植します。露出面の大きさに応じて移植する粘膜が取り出せる一方で、手術部位が2カ所になるため治療による負担が少し大きくなります。 編集部: 上あごの切り取った部分は、きちんと元通りに戻るのでしょうか? その間、痛みはないのですか? 金子先生: 期間は多少かかりますが、上あごの粘膜を切り取った部分は必ず元通りになるので、その点は心配しなくても大丈夫です。約1カ月で表面がしっかり覆われ、3カ月ほど経つと元の厚みまで戻ります。 痛みに関して、切り取った直後はすり傷のような状態なので何かを食べるとしみたり、痛みを感じたりしやすいですが、それも1週間程度で落ち着きます。 編集部: では、もう1つの「歯ぐきを移動させる」というのが、どういう方法なのか詳しく教えてください。 金子先生: 歯肉退縮を起こしている周囲の歯ぐきを一部切り開いて上に引き上げる、あるいは横に移動させて露出面を覆い縫い合わせます。1~2歯の狭い範囲の症例に限られますが、歯ぐきを完全に切り取らないので治療の負担が少なく済みます。 編集部: いずれの方法も、根面を覆った部分が治るのにどのくらいかかりますか? 金子先生: 表面が治るのに約1カ月、歯ぐきが馴染んで綺麗になるまでには3カ月ほどかかります。歯磨きの目安で言うと、術後2週間くらいから柔らかい歯ブラシで磨いてもらい、術後1カ月で元の歯ブラシで磨いてもらうイメージです。 編集部: 根面被覆を受けるにあたり、注意しておきたい点はありますか? 金子先生: どの術式を選択するにしろ、肝心なのは歯ぐきが下がった原因を特定し、取り除くことです。「なぜ、そうなったのか?」という原因を取り除いておかないと、歯ぐきの位置や形が綺麗になっても、再び歯ぐきが下がってしまう可能性があります。 また、歯肉退縮についてはその原因を改善・除去することで、根面被覆をしなくても歯ぐきが正常な状態に戻るケースもあります。したがって、まずは歯ぐきが下がった原因を特定し、その改善や除去に努めることが重要です。