新しい資金調達の選択肢「企業価値担保権」、認知度は3割弱にとどまる
活用する理由、6割を超える企業で「自社の事業性に着目した評価に基づき融資を受けたい」
企業価値担保権を活用する意向のある企業に対して、その理由を尋ねたところ、「自社の事業性に着目した評価に基づき融資を受けたいため」とする企業が66.2%と3社に2社にのぼった。 以下、「金融機関とより緊密な関係性を構築したいため(伴走支援を受けるため)」(35.0%)と「事業承継等を見据えて、経営者保証を解除したいため」(31.3%)が3割台で続いた。
活用しない理由、企業の4割が自己資本でまかなえている
企業価値担保権を活用したいと思わない企業に対して、その理由を尋ねたところ、「自己資本で必要な資産をまかなえているため」とする企業が40.8%で最も高くなった。 以下、「現在利用している融資手法(不動産担保、経営者保証による融資を含む)で充足しているため」が36.4%、「金融機関と既に緊密な関係性にあるため必要がない」が26.7%で上位に並んだ。
企業価値担保権、制度の仕組みや評価の仕方といった情報をより周知していくことが重要
本調査の結果、現時点では企業価値担保権を「知らない」企業が半数以上を占め、調査を通じて初めて知った企業も少なくなかった。その一方で、しっかりと制度の内容を理解している企業は1%にも満たず、名称を知っている企業を含めても認知度は3割に届かなかった。 また、活用に関しては、活用意向のある企業が4社に1社程度、活用したいと思わない企業も4社に1社程度となり、活用に対する見解は二分していた。また、「分からない」とする企業が半数近くにのぼり、多くの企業で現時点では判断がつかない様子がうかがえた。 活用の意向がない企業においては、自己資本でまかなえている点や、現在の資金調達の手法で十分に間に合っているなどの認識に加え、そもそも制度についての情報が十分に伝わっていないという点も活用しない理由にあげられた。 一方で、活用意向のある企業からは、「自社の事業性の評価を得たいため」や「金融機関と親密な関係を築くため」、「事業承継を見据え経営者保証を解除するため」といった理由が活用の後押しになっていた。 現状、企業価値担保権は認知度が低く、多くの企業で金融機関の評価方法や具体的な事例がないことでどのようなメリット、デメリットがあるのか判断できないようだ。理解の進む企業からは前向きな意見も多く聞かれるが、新たな資金調達の手法として認知されていくためには、行政や金融機関などが、まずは制度の仕組みや評価の仕方といった情報をより豊富に分かりやすく周知していくことが重要と言える。