新しい資金調達の選択肢「企業価値担保権」、認知度は3割弱にとどまる
企業価値担保権に対する企業の意識調査
不動産担保や経営者保証などによらない資金調達の新たな選択肢になり得る企業価値担保権。 事業者の将来キャッシュフローや無形資産を含む事業全体を担保として有形資産の乏しいスタートアップや、経営者保証により事業承継や思い切った事業展開を躊躇している事業者などの資金調達を円滑にすることで企業の活性化が期待される。加えて、金融機関によるタイムリーな経営改善、資金繰り支援の動きが加速しそうだ。 企業価値担保権の創設などを骨子とする「事業性融資の推進等に関する法律」は、2024年6月に公布され、成立から2年半以内に施行が予定されている。 そこで、帝国データバンクは、企業価値担保権に対する企業の見解を調査した。本調査は、TDB景気動向調査2024年9月調査とともに行った。
企業価値担保権の認知度は3割弱に、「知らない」企業は半数以上に
企業価値担保権の認知状況について尋ねたところ、「制度の内容を含めてよく知っている」が0.5%にとどまったほか、「制度の内容を含めてある程度知っている」(5.3%)、「名前は聞いたことがあるが、制度の内容は知らない」(22.4%)も低水準だった。 「自社が金融機関にどのように評価されるのか興味深い」(飲食店)などの意見も寄せられたものの、認知度は3割弱にとどまった。 他方、「知らない(名前も聞いたことがない)」とする企業は56.5%と半数にのぼった。企業からは「初めて知ったので、これから調べていきたい」(娯楽サービス)や「新しい言葉なので勉強を進める」(運輸・倉庫)というように、知らないながらも前向きに捉える声がいくつも聞かれた。 その一方で、「取引金融機関からは、一切情報を教えていただけない状態である」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)や、「詳しい制度内容などをまとめた資料があれば見たい」(飲食店)というように、新しい制度のため情報が容易に得られない点を指摘する声も複数聞かれた。
企業価値担保権に対し『活用意向あり』とする企業は26.7%
自社において金融機関から融資を受ける際に、企業価値担保権を活用したいか尋ねたところ、「活用したいと思う」は3.8%、「今後検討したい」は22.9%となり、両者を合計した『活用意向あり』とする企業は26.7%だった。 他方、「活用したいと思わない」も26.7%で、企業の見解は二分している。 企業からは、「資金調達が有利になるのであれば積極的に活用したい」(電気機械製造)などの声がある一方で、「100%出資の親会社に依存しているため、当該制度の活用は考えていない」(機械製造)といった意見も寄せられた。 ただし、「分からない」が46.6%となり、活用意向について、現時点では多くの企業で判断がつかない様子もうかがえた。 また、活用の有無にかかわらず、「面白い制度だが、金融機関が適正な判断ができるとは思えない」(飲食料品卸売)などというように、融資を行う金融機関への審査能力や知見不足を懸念する意見もあがった。