機械じゃない、人間の対応が重宝される時代に
顧客対応に人工知能を活用しようとする動きが日本の金融機関で広がり始めている。人間の話し言葉を分析し、データの蓄積もできるIBMのスーパーコンピューターシステム「ワトソン」などをビジネスに応用し、コールセンターや店頭での顧客の問い合わせに対するオペレーターによる回答の支援に活用する狙いだ。遠くない将来、いろんな仕事で機械が人に取って代わる時代がくるのかもしれないが、アメリカでは逆に、「機械全盛」の時代を嫌う人向けに、人間が対応するサービスを売りにするところも出てきた。
人間とのコミュニケーションは不要か?
アメリカでは電気やガスの開通契約やケーブルテレビなどの申し込みはたいてい電話で行うが、人が最初に出てくることはほとんどなく、電話をかけた側は自動ガイダンスに従ってボタンを押し続ける。ほとんどの外国人にとって、これは「苦行」であり、アメリカ生活の最初の関門ともいえる。ただでさえ英語や環境に慣れていないのに、会社ごとに異なるガイダンスを聞きながら瞬時に反応しないといけない。一度でも間違えれば、作業は最初からやりなおしである。慣れないうちは何度も間違えるので、一つの手続きを完遂するのに非常に長く時間がかかり、ぐったりしてしまう。 ガイダンスに従ってボタンを順調に押し続けても、相談内容がうまく当てはまらず、結局、最後に「オペレーターとしゃべる」(たいてい0番)を選んで、ようやく電話に出てきた人としゃべることも多い。まさに「だったら最初から人間が出てよ」と愚痴の一つも言いたくなる瞬間だ。当然ながら、評判は非常に悪く、しまいには嫌になって電話を投げ出したり、電話にあたったりする人もよく目にした。
最初は、自分が外国人だからそうなのかと思っていたのだが、生活に慣れてくると、実はそうでもないことがわかってくる。問い合わせなどの電話になかなか人間が出てこないことにイラつくアメリカ人も多いようで、これを逆手にとって「お問い合わせには、いつでも最初から人間が対応します」というテレビコマーシャルでアピールしている銀行が出てきているほどだ。 さらに、その名もずばり「GetHuman」(人間をつかまえる)というインターネットサイトまで出現して、「ここにかければ人間とつながる」という電話番号などがあらゆる業種にわたって紹介されている。こうしたものを目にすると、結局はアメリカ人も直接、人間とのコミュニケーションを求めていることがわかる。 だが、それでも多くの企業で機械対応が全盛なのは、やはりコストの問題なのだろう。人間に対応してもらうのは、今やお金のかかる貴重な機会なのである。