大人にとっての「正義」とは何か?【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第26回
■「行く」のが正義か、「留まる」のが正義か? 五十嵐 サトさんだったら、このシチュエーションでどんな行動をとりました? 里崎 僕なら行かない。まず、メディアに出ている人間として、トラブルに見舞われた場合のことを考えたら、むやみな行動はとるべきじゃないと思うから。顔を出して活動している以上、一歩間違えたら一部だけを切り取られてこちらが加害者になってしまう可能性もある。攻撃されることによる生命的なリスク、仕事を失ってしまう社会的リスク。そうしたことを考えると、とっさの行動はできないな。 五十嵐 僕はたまたま次の予定がなかったら、その場にとどまったけど、もし仕事の予定があったら、そのまま通り過ぎたかもしれない。そう考えると、僕もサトさんと同じ立場をとったと思いますね。サトさんのようなリスク管理って、本当にキャッチャーっぽい気がします。そう考えると、子どもの頃のようにシンプルに「オレがヒーローになる」と行動を起こすほど単純なものではないし、サトさんのようにきちんとリスクを理解した上で行動を起こすというのが、大人にとっての「正義」なのかもしれないですね。 里崎 そのやりとりを、通りすがりの誰かが動画で撮影していてSNSに拡散する。「どうやら里崎が酔っ払いと揉めているようだぞ」と話題になり、止めに入っていたはずの僕が悪者になって世間に広まってしまう......。そういうことをついつい考えてしまうし、むしろ考えて行動したほうがいいと思うけどね。 五十嵐 本当にその通りだけど、いざ突発的なアクシデントがあったときにそこまで冷静になれるかどうか......。そして、冷静に行動した結果、例えば今回の例でいえば子どもに何か問題が起きたとしたら、ずっと後まで後悔しそうで。ますます「正義」というものがわからなくなりますね。 里崎 電車の中での痴漢もそうだけど、正義感から助けに入ったつもりが、結果的に冤罪に巻き込まれる可能性もある。だから最初の話に戻るけど、そこでよりどころになるのが「自分の正義」をしっかり持つことじゃないのかな? 僕の場合でいえば、「法律を犯さない範囲内で、僕自身が正しいと思ったこと」をする。 五十嵐 そうなると、僕が挙げたケースでいえば「すぐに声をかける」「ちょっと様子を見る」、そして「そのまま立ち去る」など、いろいろな対応が考えられるけど、「まずは様子を見る」というのは、僕なりの「正義」だったのかな? ――「こうありたい」という理想の行動と、現実に即したリスク管理による慎重なアクションとの狭間で、自分はどうすべきなのか? あらためて「正義」について考えるきっかけとなりました。次回も引き続き、「正義」について伺いたいと思います。 里崎・五十嵐 次回もよろしくお願いします! 構成/長谷川晶一 撮影/熊谷 貫