愛知は織田信長、大阪は豊臣秀吉なのに秋田は“菅前総理”…「わが県のナンバー1偉人」にネット騒然も、地元民は納得しきりの裏事情
秋田県は漫画王国だったはずでは
さて、「クイズプレゼンバラエティーQさま!!」の話に戻ろう。筆者はランキングを見て、見事に県民性や県特有の事情が表れているなあと感じてしまった。秋田県の2位以下はというと、2位:白瀬矗(南極探検隊隊長)、3位:落合博満(野球選手)、4位:東海林太郎(歌手)、5位:小野小町(歌人)となっている。 他県で選出される文化人は、現在も活躍する人物が少なからず入っていた。白瀬は秋田県を代表する偉人であるが、落合、東海林が選出されるあたり、秋田県全体の高齢化が進んでいることの象徴であるように感じてしまう。歌手の藤あや子、タレントの加藤夏希や壇蜜なども秋田県出身なのだが、選出されていないのだ。 他県のランキングには漫画家も多くランクインしている。鳥取県は1位が水木しげる、2位が青山剛昌であり、富山県は2位に藤子・F・不二雄、3位には藤子不二雄(A)などが挙がっていた。秋田県では『釣りキチ三平』を描いた漫画家の矢口高雄が全国に先駆けて「横手市増田まんが美術館」を開館させるなど、漫画を文化として推進しようと取り組んできた歴史がある。 しかし、秋田県のランキングには、矢口をはじめ、漫画家がランキングに1人も入らなかった。最近では『ルックバック』がヒットした漫画家の藤本タツキも出身者であるが、ランキングから漏れている。同じ東北地方の宮城県は4位に石ノ森章太郎が選ばれていたが、秋田県は地方発の漫画を使った町おこしで先駆けたはずなのに、十分に根付かせることができていないように感じた。
政治家、公務員、銀行員が尊敬される
秋田県民は文化的なものに関心が低いわけではない。しかし、筆者がいつも秋田県を訪れるたびに感じることなのだが、県民の考える“偉い人”のイメージといえば、政治家、公務員、銀行員、医者なのである。秋田県内での自民党の人気は驚くほど高いが、とにかく、権力を持っている人を県民は崇める傾向にあるのだ。 筆者には「秋田県の文化はテレビが創造している」という持論があるが、秋田県民ほどテレビの影響を受けやすい県民は他にいないと思う。現にNHKの受信料支払率はダントツ日本一で、なんと約97.3%という驚異的な数字を誇る(2024年6月25日にNHKが発表した2023年度末の推計世帯支払率)。 第2次安倍晋三内閣が発足し、“令和”の元号が発表され、菅内閣が発足、そして退陣するまで、菅氏は連日テレビに出続けた。その出演回数は、おそらくあらゆるアイドルや芸能人を凌駕するものだったであろう。かくして、県民は菅氏を県の誇りと考えるようになり、その熱狂は総理大臣就任で頂点に達した。テレビを愛してやまない県民性もまた、菅氏を1位に選んでしまう要因ではないかと思う。