トランプ復活でゼレンスキーがヘコむ「2022年ウクライナ和平案」も復活か?
ロシア苦戦でロシアの交渉姿勢に変化
ロシア軍はチェルニヒウ、ハリキウ、スームィを占領しようとしたが、3都市とも大きな損害を受けたものの、失敗した。3月中旬になると、ロシア軍のキーウ方面への攻撃は行き詰まり、多くの死傷者を出す。こうして、3月17日付の条約草案では、ウクライナはロシアに対し、国際的な「安全保障」への同意を求めるようになる。この国際的な「安全保障」によって、ウクライナが再び攻撃を受けた場合、ウクライナの同盟国を含む他の国々がウクライナを防衛する体制の構築がめざされた。 3月29日のコミュニケは、ウクライナ側が大筋で起草したもので、「ロシア側はこれを条約の骨子とすることを暫定的に受け入れた」と、先に紹介した『フォーリン・アフェアーズ』の論文は書いている。コミュニケで想定されている条約は、ウクライナが永世中立、非核国家であることを宣言するもので、ウクライナは、軍事同盟に参加したり、外国の軍事基地や軍隊の駐留を認めたりする意図を放棄する。コミュニケは、国連安全保障理事会の常任理事国(ロシアを含む)、カナダ、ドイツ、イスラエル、イタリア、ポーランド、トルコを保証国の候補に挙げている。さらに、クリミアとセヴァストポリの地位は外交的に決定されるとのべられている。
2022年4月15日以降
コミュニケと4月12日の草案では、ウクライナが攻撃された場合にキーウを支援するかどうかを保証国が独自に決定することが明確にされていたのに対し、4月15日の草案では、ロシア側はこの重要な条文を覆そうとした。このような行動は「すべての保証国が合意した決定に基づいてのみ発生する」と主張し、侵略者である可能性の高いロシアに拒否権を与えた内容となっている。ウクライナ側はこの修正を拒否し、すべての保証国が個別に行動する義務を負い、その前にコンセンサスを得る必要はないという元の方式を主張した。 ほかにも難問があった。それは、領土の問題だ。安全保障の対象となる土地をどのように指定するかであった。 国際的に承認された国境内のウクライナの全領土か? 2022年まで続く境界線までか? こうした問題に対する解答は存在しなかった。ゆえに、和平交渉は頓挫(とんざ)したのである。