トランプ復活でゼレンスキーがヘコむ「2022年ウクライナ和平案」も復活か?
ロシア側の要求の変化
今年11月4日になって、2022年3月7日段階でロシア側がウクライナに提示した条約草案が明らかになった(協議の模様については下の写真を参照)。ウクライナに対するロシアの要求を文書で示したもっとも古い文書だ。ロシアのReal TimeとRadio Libertyの調査プロジェクトである「シスチェーマ」のジャーナリストが、全面侵攻の直後に作成された、ウクライナとの平和条約に関するロシアの最初の提案を含むとされる文書を公表したのである。 これによって、和平条約交渉の進展がより明確にたどれるようになった。文書には6ページの条約本編と4ページの付属文書が含まれている。ウクライナの中立のパラメーター(軍事的義務と国際的義務)、国境問題、人道的問題(言語、宗教、歴史)、対ロ制裁の解除など、18の条文がさまざまな分野をカバーしているという。 この文書は、ロシアが2022年9月にウクライナの四つの地域を併合するずっと前に起草されたため、ケルソンとザポリージャ地域については触れられていないが、ウクライナがクリミア、セヴァストポリ、ドネツク、ルハンスク地域を完全に放棄するという、ロシアが長年公言してきた希望が含まれている。 この報道によると、「平和条約」の最初のバージョンでは、ロシアはまた、(1)ウクライナのほぼ全面的な武装解除を無制限の支配下に置くこと、(2)欧米の援助からウクライナを隔離すること、(3)侵攻の最初の数週間に占領した領土にロシア軍を駐留させ、長期的に支配すること――などを主張していたという。
3月7日段階のロシア側の要求
この初めて明らかになった3月7日段階のロシア側の要求をもう少し詳しくみてみよう。たとえば、ロシアは当初、ウクライナの全軍を最低限に、より正確には1500人の将校を含む5万人(2022年以前のウクライナの5倍)にまで削減することを要求した。この願いが叶えば、ウクライナに残るのは艦船4隻、ヘリコプター55機、戦車300両だけとなる。さらに、ウクライナは「射程距離が250キロを超えるあらゆるタイプのミサイル兵器を開発、生産、取得、自国領土に配備しない」よう求められた。ほかにも、ウクライナはいわゆるドネツクとルガンスクの「共和国」の「独立を承認」することになっていた。 当初の戦闘が思惑通りに進んでいないなかでも、ロシアは強気の姿勢を示していたことがわかる。要するに、この文書でロシアがウクライナに提示したのは、「停戦体制」と「敵対行為終結のための措置」のみだったのである。ウクライナの領土からロシア軍を撤退させるという話はなかったという。ロシアは、当時すでに支配下にあった領土を拡大しないことだけを約束した。 とくに、ロシア軍と国家警備隊は、ロシアとウクライナが「この条約に基づくすべての義務」を果たすまで、その場に留まることになっており、圧倒的にロシア有利の主張が目立った。これらの義務には、法律の抜本的な改正、軍縮、国際保証の受け入れなどが含まれているため、ロシア軍と国家警備隊が長期間ウクライナ駐留を継続する可能性も十分にあったことになる。