【注:007の撮影カットではありません】 ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション
ディフェンダーにV8は必要なのか?
このグレードがどうして必要なのか? 時折そんなモデルに出くわすことがある。今回のディフェンダーV8がまさにそうだった。 【写真】ランドローバー・ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション試乗の様子をみる (37枚) 理由はいくつかある。フラッグシップモデルであるレンジローバーには過給V8の強心臓が名実ともに欠かせないだろう。だがディフェンダーはそれよりもはるかにカジュアルなイメージがある。 何しろ先代までならイギリスではワークホースとして重宝されていたクルマなのである。パワーユニットに関しても既存のP300(ガソリンの直4ターボ)とD350(ディーゼル直6 MHEV)というラインナップで実用領域は完全にカバーできていたように思う。 スポーツカーなら可能な限り大きなエンジンを積むという正義もあるが、クロスオーバーSUVではどうだろう? そんな疑問を抱きながら今回ステアリングを握ることになったのはディフェンダーV8の短い方、2ドアの90である。グレーとブラックで固めたカルパチアンエディションは、遠目には007シリーズで飛び跳ねながら活躍していた悪役っぽく見えた。 だが実車を目の当たりにすると、悪っぽい黒ではなくタキシードの黒のような存在感に圧倒される。 4ドアの110からホイールベースを435ミリ切り詰めたショートボディは原初のランドローバーから続く伝統的なものだが、そこに525psを発揮する5LスーパーチャージドV8を叩き込むという仕事にはパロディ臭さすら漂っている。実際はどうなのか?
ランドローバー初のスープアップ感
運転席から眺めるダッシュ周りの景色はいつものディフェンダーのそれ。 シリーズ最上級のV8だからといっても特殊な感じはしない。だが走りはじめてみると、普通のディフェンダーじゃないことはすぐにわかる。 人工スエード張りで重みのあるステアリングを通して、4気筒モデルより前後とも2サイズ太い(255→275幅)マッシブな4輪がビタッと全面接地している印象が伝わってくる。 普通のCクラスとAMGのC63の違いじゃないけれど、そんな質感の高まり方。これまでのランドローバーでは感じたことのないスープアップ感として映ったのである。 P525と呼ばれるパワートレインはアイドリング付近から最大トルクが溢れ出ているような印象で、スロットルを踏み込むと、思ったよりリアを沈ませることなくズンッと前に出ていく。 ターボユニットであるにも関わらず滑らかな印象のBMW製4.4L V8ではなく、敢えて古典的ともいえる自社製5LスーパーチャージドV8を載せているわけだが、そのほうがトルクカーブが直線的でディフェンダー90 V8のキャラには合っていると感じた。 筆者は4気筒エンジンを積んだディフェンダーの、路面に軽くタッチするような感触、走りが大好きだ。アイポイントの高さと相まって、軽快に馬を走らせているような感じすらするのである。 だがディフェンダーV8のドライブフィールにそんな情緒的な印象はない。いうなれば小さな戦車にでも乗り込んでいるような、そんな感じだろうか。それも脱兎ごとく速いのだ。全く前例がない。