張り子の牛に雪投げつけ 長野に春呼ぶ「お田植え祭り」
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長野県筑北村の刈谷澤神明宮(かりやさわしんめいぐう)で5日、春を呼ぶ神事として知られる「お田植え祭り」があり、氏子や参拝者らでにぎわいました。張り子の牛で代(しろ)かきの動作をしながら拝殿前を回り、参拝者が雪を投げつけるユーモラスなやり取りが人気。神事を終えた地元の人たちは「さあ、春の準備だね」と明るい表情でした。
ユーモラスな祭り、場内は笑い声
刈谷澤神明宮はJR篠ノ井線坂北駅から南へ車で15分ほどの山間部にあり、樹齢数百年の杉木立に囲まれています。 この日は午後2時から神事や獅子舞などが行われた後、張り子の黒い牛が登場。白装束の太郎役が牛の手綱を握り、次郎役がくわを手に牛の後に続き、付き人も加わって田んぼに見立てた拝殿前を3周しました。境内には氏子や参拝者ら200人が詰めかけました。
代かき役の次郎が「毎年毎年、いやでござる」と言いながら回り、見物人は太郎や次郎に雪を投げてぶつけました。太郎の背中に大きな雪の塊を載せる人もいて、場内には笑い声と掛け声が。周回が終わるころには「ぼー、ぼー、ぼー」という古くから伝わる独特のかけ声が上がりました。 参拝者らが雪を投げつける所作は、水不足にならないように祈り、豊作を願う意味があるとされています。この日は境内に雪がなく、特別に用意された雪を使いました。地元の人によると「ここ10年ほど冷え込みが緩くなり、雪も少ない」。
「お田植え祭り」は古くからの農作業にちなんだ神事をよく残しているとして長野県が無形民俗文化財に指定。楽しいイベントの色彩も帯びているため県内外のアマチュアカメラマンにも知られており、この日も数十人がカメラを構えていました。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説