ロケットや人工衛星搭載機器向けの熱解析シミュレーションサービスを提供開始
OKIグループの設計開発受託事業会社であるOKIアイディエスは2024年11月26日、地上と異なる冷却手段が求められる特殊な環境下で稼働するロケットや人工衛星に搭載する機器を対象とした「宇宙機器向け熱解析シミュレーションサービス」を同月27日に開始すると発表した。 同社はニュースペース市場をターゲットに宇宙機器向け熱解析シミュレーションサービスを展開し、独自の熱伝導シミュレーション技術を活用して、機器筐体の放熱設計の高度化と短納期化に貢献することで、2026年度に5000万円の売上高を目指す。
新サービス提供の背景
通常の熱解析シミュレーションは、熱の移動による機器の温度分布状態や熱応力の変化を計算する。機器が置かれる環境を自由に設定できるため、実機では測定不可能な部分の温度も算出可能だ。 これにより製造前に設計を検証して開発期間を短縮でき製造コストを減らせる。しかし、宇宙環境でのシミュレーションには複数の課題があった。1つは、地上から宇宙の真空環境への移行時における動作環境の急激な変化だ。また、宇宙空間には空気が存在しないため、空冷技術による対流熱伝達ができず、発熱源である電子部品からプリント配線板(PCB)を介して筐体への熱伝導による放熱が主な手段となる。これらの要因により、物体間の熱伝導を正確に予測することが困難だった。
新サービスの特徴
そこで、新サービスでは、時間とともに急激に変化する環境下での温度分布の変化を正確に把握するため、時間の経過に伴う温度分布の変化に応じる非定常熱解析を行う。これにより、実際の動作条件下での温度変動を詳細に再現するシミュレーションが可能になる。 宇宙機器の発熱源である電子部品を搭載するプリント回路板(PCB)は、主に熱伝導率の低いガラスやエポキシ樹脂と熱伝導率の高い銅で構成されている。銅は回路パターンとして各層に配置され、平面方向に熱を伝えやすく、厚み方向には熱を伝えにくい異方性の熱伝導率を持っている。PCBに数値制御(NC)ドリルマシンで穴を開け、そこに銅めっきを施した「スルーホール」が多数存在し、それが厚み方向に銅をつなぎ、局所的に熱伝導率を高めている。 そのため、新サービスでは、各層の厚みやガラス、エポキシ樹脂、銅の割合、単位面積当たりのスルーホールの数を考慮して熱伝導率を平均化した。これにより、平面方向と厚み方向それぞれに一律の熱伝導率を持つ簡素化モデルを作成し、精度の高いシミュレーションが可能になった。 さらに、同社では、新サービスに向け、機構設計、実装設計とエレキハードウェア設計の専門家を組み合わせた専門チームを結成した。このチームは、OKIグループおよび、多様な顧客に提供してきたデザインサービスの実績とノウハウを生かし、正確なシミュレーションに加えて、効率的な放熱ルートを確保した装置内機器レイアウトとPCB上の部品配置を提案する。特にさまざまな材料および形状の熱特性に関する知見が、効果的な熱設計に役立つとみている。
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