【毎日書評】「自分で自分の機嫌をとれる人」が自然にできている3つのマネジメントとは?
求められるのは「自分で自分の機嫌をとれる能力」
ビジネスシーンにおいては近年、「人的資本」ということばがよく使われています。いうまでもなく、その会社や企業にとっての資本としての「人固有の価値」のこと。でも、人固有の価値とはなんでしょう? どのような人財が今後、生き残っていくのか? それは無人島と同じだ。すなわち、みなさんとの共通言語で申し上げれば、◎の人財である。どんなときも自身の心をまずは整えて、「機嫌がいい」状態でいられる能力、すなわち、「ライフスキル」を働かせて、「質」を重んじている人ということになる。自身で自分の「機嫌」をとれる能力を有し、「ごきげん大地」で仕事も人生も生きていける人財といえるだろう。(211ページより) ただし認知的な頭のよさそのものではなく、重要なのはその機能を最大・最適に働かせる状態を安定的に生み出せること。つまり、これからの人的資本は「ライフスキル」と「機嫌がいい」にほかならないというのです。(210ページより)
「FLAP人材」と「LAPER」とは?
三菱総合研究所が、これからのビジネスシーンにおける人材のあり方を「FLAP人材」と呼んで推奨しているのだそうです。「FLAP」のFは「Find」の頭文字。つまり、自分を見つめ、自分のなかにある「Learn(学び)」の芽を探す能力だということ。それは、これからの時代に羽ばたいていけるニーズのある人財だと著者は述べています。 わたしは、このFこそ、非認知能力だと考えている。自分自身への気づきだ。自分の感情、好き、ごきげんの価値、意味づけ、そしてあり方などにアクセスできる力といっていい。これにもとづいて「Learn」のLがあるべきだ。そして、「Learn」したことで「何を」するべきなのかを学び考える。 そして、Lの知識だけに終わらせるのでなく、「Action」する。すなわち、実行や行動の「Action」になるAだ。そのことにより、はじめて「Performance」となり活躍することができ、成果や結果につながっているという考えである。(212~213ページより) ところがいまのビジネス界にはFがなく、Lからはじめて仕事をしている「LAP人材」が多い。著者はそういう人を「LAPER(ラッパー)」と呼んでいるといいます。 それは学校教育がLからはじめる仕組みだからだ。試験範囲は決まっている。学ぶことは先生から言われたことで決定している。外的な状況に対応、対策、対処するために学んで(Learn)いる。認知的な脳の使い方である。(213ページより) いわれたことを学び、それに基づいて行動し、その一方ではストレスを抱え、がんばって我慢して実行(Action)しているということ。そうやって成果を出している人が偉くなっているのが、いまの日本の大企業の大半ではないか。そして、そうした状況に対する警告のひとつとして、三菱総研が「FLAP人材」のような概念を提示したのではないか。著者はそう考えているようです。 なお、本書に『「機嫌がいい」というのは最強のビジネススキル』というタイトルがつけられているのは、「非認知脳の代表であるライフスキルが、「FLAP」の基本となる「Find」につながると考えられるからなのだそうです。いいかえれば、「Find」できる「Finder」をもっと増やしていかないと、「LAPER」ばかりで日本のビジネスシーンに人的資本は増資されないわけです。 自身の「Find」からはじまるあり方こそ、自分で考え、自ら行動していく主体的なアントレプレナー精神である。 みなが独立していく必要はないが、どこにいても「FLAP」の働き方ができないと、デジタル社会の中で生き残れないと考えるのは妥当な気がする。 どんな人も、どこでどんな仕事をしていても、自分の人生を生きていなければならないのだ。(214ページより) つまり階段を登らなくなれば、外界に振り回されながら生きていくしかなくなるということ。そうならないためにも、Fを磨き続ける仕組みを、個人や企業としても構築していく必要があると著者は主張するのです。 ぼーっとしていては、これからの時代は個人としても生き抜いてはいけないし、企業も人の集まりなので生き残れないのだ。「人的資本」の増資に力を入れてほしい。(215ページより) したがって個人も企業も、このことを忘れるべきでないのかもしれません。(212ページより) 本書で紹介されている「機嫌がいい」状態とは、「揺らがず囚われず」の心の状態を「フロー(Flow)」と呼んでいたミハイ・チクセントミハイ教授の「フロー理論」のことだそう。いまでは各界で応用されているというその考え方を取り入れた本書は、自分を機嫌よく保つために役割を果たしてくれることでしょう。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 日本実業出版社
印南敦史