結婚相談所で出会い、とんとん拍子に結婚・出産した立野夫妻。共働きで1歳児を育てながら、妻が「10時間睡眠」を確保する方法とは?
世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。 【画像】食洗機は5人分の皿が一度に洗える大容量サイズ 青葉さん32歳、治人さん36歳のときに、結婚相談所を通じて出会い、結婚。結婚1年目に第一子を出産し、共働きをしながら保育園に通う1歳の長女を育てている。 2人が登録した相談所では、プロフィールと共にお互いの将来の価値観が開示されるようになっていたそう。結婚前から「すぐにでも子どもがほしい」(青葉さん)、「子どもができても、できれば共働きがいい」(治人さん)というお互いの意志を確認できていたため、入籍・出産・復職まで、とてもスムーズだったという。 「普通なら、お付き合いをして、お互いの結婚観や子どもに対する考え方を探り合う段階があると思うのですが、私たちはそこを飛ばしてきているんですよね。でもだからこそ、これからしっかり夫婦でコミュニケーションを深めていかなければと思っています」(青葉さん) そんな青葉さんの話に、にこやかにうなずく治人さん。お互いを尊重し合い、補い合いながら、穏やかで笑顔あふれる家庭を築いてきた立野夫婦のセブンルールを聞いた。 ■7ルール-1 10時間睡眠確保のため、時短家電を活用する 子どもができても共働きでいたいと考えていた治人さんは、当然のように、出産直後から積極的に子育てに注力していた。 「育休も1ヶ月とってもらって、新生児の頃から2人で一緒に育児をしてきました。だから、娘もすごくパパになついているんですよ。パパが帰ってくると、いつも大喜びです」(青葉さん) パパっ子すぎて、治人さんが帰宅する23時ごろまで寝ずに待とうとすることも多かったそう。それには夫婦も困っていたが、生後7ヶ月で4月入園してからは、20時には寝てくれるようになった。 「一度寝ると朝まで寝てくれるので、ありがたいことにあまり手のかからない子だと思います。ただ、私にとっては離乳食作りがすごく大変。もともと料理が得意ではないので、手の抜きどころがわからず、レシピに忠実に作るしかないんです……。しかも娘は市販の離乳食は一切食べてくれないので、土日に5、6時間かけて作り置きしています」(青葉さん) 青葉さんは産休をとるまで外回りの営業職だったが、復帰後は希望して内勤のみの営業・事務に異動し、10時~16時の時短勤務をしている。それでも、退社して17時に園にお迎えに行き、帰宅してから園の荷物の片付けや入浴、食事、洗濯、20時の寝かしつけまで、大忙しだ。 「私も異動できたことで以前より帰宅が早くなったのですが、それでも20時過ぎ。妻には苦労をかけてしまっています。その分、妻にはそのまま娘と一緒に休んでもらい、私が帰宅してから食器の片付けをしたり、洗濯物をたたんだりしています」(治人さん) この毎日を可能にしてくれているのが、時短家電だ。 「産後、『これは無理だ』と感じて、夫と相談してドラム式洗濯乾燥機やお掃除ロボット、食洗機を購入し、家事時間の短縮に務めました。ドラム式洗濯乾燥機があることで、私が夕方に洗濯機をまわして、帰宅後に夫がたたむ、というバトンタッチができるようになったんです。食洗機も、庫内にお皿を並べ、スイッチを入れておけば休めるので、毎日10時間は寝られるようになりました!」(青葉さん) 元気でいられるために必要な睡眠時間は人によって違う。仕事に育児に、と起きているあいだ中フルスロットルの青葉さんにとっては、10時間睡眠は絶対に必要なのだそう。 もうひとつ、夫婦の生活を助けているのが、治人さんが結婚前から活用している冷凍宅配弁当の「nosh(ナッシュ)」だ。 「帰宅してからの夕食となると深夜になってしまうので、糖質と塩分を控えたくて、産前から夕食はナッシュにしています。続けるほど値段も安くなるシステムで、メニューも豊富なので自分には合っているんですよね」(治人さん) 「正直、ナッシュがなかったら家がまわっていないと思います(笑)。おかげで、夫の食事のことは考えずに、自分の分は5分以内で作れる冷凍パスタなどで済ませています」(青葉さん) このままでは青葉さんの栄養バランスが心配なため、治人さんは家事代行の導入を提案しているものの、まだ試せていないそう。「苦手な料理を作ってもらえたら、うれしいですよね」と、青葉さんも検討中だ。 ■7ルール-2 家族イベントについては夫がリサーチ 日々忙しく過ごす立野夫婦だが、夫婦ともに大切にしているのが子どもの行事だ。お宮参りにお食い初め、誕生日など、欠かさず家族そろってお祝いしてきた。 「夫はリサーチ力があるので、自ら調べて行事で何を手配すればよいのか調べたり、お店を予約してくれたりするんです。私は余裕がないことも多いので、とても助かっています」(青葉さん) 青葉さんを驚かせたのが、治人さんが保育園行事にも毎回、積極的に参加することだ。 「入園説明会でも、てっきり産休中だった私がひとりで行くものかと思っていたら、前日に『明日、午前休とれることになったら一緒に行くよ』と行ってくれたんです」(青葉さん) これには、「単純に、娘がどんな園に入るのか知っておきたかったんですよね」と治人さん。 入園してからも、仕事を調整して、園の行事ごとには必ず夫婦で参加しているという。穏やかな人柄に反して、娘の行事ごとには情熱的だ。保育園について知りたいというのは公務員という職業柄もあるかもしれないが、愛情細やかな人でもあるのだろう。 ■7ルール-3 それぞれの自由時間を大切にする 結婚相談所のプロフィールで、お互いに共通していたことのひとつが「自由時間を大切にしたい」という点だ。 「子どもはかわいいし、家族の時間は大切なのですが、ひとりの時間もないと苦しくなってしまうんです。だから、ひとりでぶらぶら街を歩いて、パン屋さんに寄ったり、ラーメンを食べたりする時間が、今も月に2回程度はありますね」(青葉さん) 息抜きがないと、「行き詰って、『もう全部やめたい!』と考えてしまう」と青葉さん。それが、ひとりの時間を取ることで、「エネルギーがチャージされて、また1ヶ月がんばれるんです」。 何気ないようで欠かせないひとり時間。治人さんも、それをよくわかっているから快く送り出す。 「妻はしばらく自由な時間をとれていないと、表情がぐったりして、笑顔が少なくなり、言葉も減っていくんです。それが見ていてよくわかるので、その時には『休んでおいで』と伝えています」(治人さん) 治人さん自身も、年に一度、仕事を調整して泊りがけで音楽フェスに参加している。治人さんにとってやめることは考えられない大切なものだ。 「本当に楽しみにしているのが伝わってくるので、止める気にはならないですね。いつか私と娘も一緒に行けたらな、と思います」(青葉さん) 家にいるときでもときにはひとりになれるよう、夫婦ともに個室を用意している。それぞれに自分をメンテナンスすることが、家族の笑顔につながっている。 ■7ルール-4 予定が決まったらすぐ共有 育児と仕事を両立しながら、たまのひとり時間を楽しむためにも、重要なのがスケジュールの共有だ。 治人さんは結婚当初から、仕事終わりに帰宅を知らせるメールを欠かさないという。 「平日の帰宅時間だけでなく、週末に美容院や歯医者の予約が入ったときも、すぐに共有してくれます。子どもが小さいと、ちょっと外出したり、料理をしたりするのも大変なことがあるので、夫の予定がわかっていると『この時間は子どもを見てもらって、集中して離乳食が作れるな』などと予定を立てやすいのでありがたいですね」(青葉さん) 暗黙のルールとなっているのは、「予定が決まったらすぐに伝える」ということだ。 「連絡のしかたは普通にLINEで予定を伝え、聞いたほうがすぐに自分のスケジュールにも記録する、という方法なのですが、お互いに早めに伝えようという意識があるので、今のところ困ったことはないですね」(治人さん) 特に週末はどちらがメインということはなく、夫婦で家事・育児を担っている。だからこそ、お互いのことを考えれば、連絡が漏れたり遅くなったりすることはないという。 ■7ルール-5 子どもの将来資金は夫が管理 いくら価値観が合っていても、相談しなければいけないこともある。子どもが産まれるとそれまで以上に重要になってくる、お金の話だ。 「私たち夫婦の場合、お財布は別々。独身時代が長かったので、そのほうがラクなんですよね。家族にかかるお金は、おおまかには私が食材・日用品購入費や光熱費を、夫がそれ以外の住居費や保育費などを支払っています」(青葉さん) 子どもにかかる費用については、別々というわけにもいかない。そこで、夫婦で相談し、治人さんの新NISA口座を子どもの教育資金に充てるものとして運用・管理している。 「もともと私が投資をしていたので、今後も私が担当することにしました。今のところ、この形で良いかなと思っています」(治人さん) ■7ルール-6【夫】怒らない、叱らない 治人さんは穏やかな性格で、夫婦で口喧嘩をすることはほぼないという。そんな治人さんのマイルールは、子どもに怒らない、叱らないということだ。 「居心地の良い家庭で、子どもには優しく穏やかな性格に育ってほしいんですよね。私は父親がしつけにうるさいタイプで、それが嫌だったのが反動になっているのかもしれません」(治人さん) 子どもはまだ1歳だが、これから注意しなければいけない状況が出てきても、「怒るのではなく、なぜだめなのか説明できる親になりたい」と治人さん。 青葉さんも、「私はイライラして子どもにあたるような口調になってしまうこともあるので、夫がいつも落ち着いていてくれるのはありがたいですね」と、治人さんのルールに賛同している。 ■7ルール-7【妻】自分の価値観を押し付けない心掛け 実は青葉さんも、自分の親が反面教師になっている部分があるという。 「うちの親は『女の子だからこうしないといけない』とか結構偏った意見を言うタイプでした。私もそれを当たり前のように聞いていたために、かなりバイアスのかかった考え方が刷り込まれてしまったんです」(青葉さん) 時代の違いもあって、こういう人も少なくないだろう。だが、それを子どもには押し付けない、と青葉さんは決めている。 「子どもにとって親の言葉の影響力は大きいので、いろんなことを話して教えてあげたいと思う反面、価値観を植え付けてしまわないよう、話し方には配慮して育てたいと思っています。親は“ひとつのサンプル”でしかなくて、価値観や可能性はほかにもたくさんあるということを伝えたいですね」(青葉さん) ■彼らの7ルールを一言で言うと……? 立野夫婦の希望は、「穏やかであること」。もめるのではなく、家族で楽しく生活ができる毎日のために、お互いに配慮し、補い合い、支え合う。 一方で、青葉さんはもともと自由が好きな、縛られない人だ。治人さんも、自由を大切にするタイプ。結婚前からの自分たちの個性を大切に、自分を保つために必要な時間を、お互いに尊重している。 価値観の合う2人だからこそ、今まで大きな喧嘩もなく、仲良く仕事と子育ての両立をすることができてきた。だが、まだ遠慮して言いたいことを言い切れていないのかもしれない、と青葉さん。 「夫が園の行事に積極的なことのように、良い意味でも驚かされることがまだあるのかも。だからこれから娘の成長に合わせて、もっと話し合っていきたいですね」(青葉さん) 治人さんは、「結婚してすぐに妊娠・出産とトントン拍子で進んできた分、新婚旅行もできていないんです。これから娘も一緒に、自然が豊かなところなどに旅行できたら」と抱負を語る。 子育てや家族のあり方は、子どもの成長に合わせて変化していく。今回聞いた7つのルールが、これからの夫婦の話し合いのなかで、どのように変化していくのか。夫婦ともに、それを心から楽しみにしているようにも見えた。 子どもを大切にしつつ、お互いにも配慮し、思いやる。夫婦にもっとも必要なことができている二人なら、めまぐるしい共働き育児のなかでも絆を深めていけそうだと感じた。 (取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)