東京タワーの3分の1は米軍戦車で出来ている。その理由とは?
「米軍戦車は品質がいいから使った」東京タワー幹部が明かしていた
東京製鉄の池谷太郎相談役は「戦車のスクラップはかなり質がいいものでした」と生方さんに明かしました。製品を納入した問屋から「この形鋼は東京タワーと東京都庁の建設に使うんだそうですよ」「千トンから千五百トンが百メートルから上の東京タワーの細いアングル(編註:鋼材の一種)として使われた」と説明されたそうです。 さらに、東京タワーを運営する日本電波塔株式会社(現在の株式会社TOKYO TOWER)の施設管理担当部長を務めていた佐野和男さんからも証言が取れました。東京タワーの建設を担当した竹中工務店に良い鉄材を使うように注文したところ、米軍の戦車の鉄材が使われることになったそうです。 「これだけのものを作るのだからいい鉄材を使うように私どもの会社の方から竹中の方に言ってありました。しかし、あの頃、鉄屑といってもいいものがなかなかなく、それが米軍の戦車に結びついたようです。米軍戦車には焼きが入っており、品質がいいから使ったんだと当時聞きました」 なるほど。戦車の鉄は熱処理で強靱なものになっていて、それが東京タワーの建材に使われた大きな理由だったんですね!
なぜか公式には語られない米軍戦車との関係。その理由は?
日本テレビ公式サイトによると、東京タワーの総重量は3600トン。米軍戦車の鉄が1000~1500トンが使われたという佐野さんの証言が事実だとすると、全体の約28~42%に上ることになります。 1999年10月11日付け読売新聞朝刊の記事は、生方さんの本を受けて追加取材したものです。それによると米軍戦車の鉄材が使われたのは、東京タワーの高さ150メートルの位置にあるメインデッキ(旧称:大展望台)より上の部分だったそうです。タワーの総重量の3分の1に当たると書かれています。 2003年放送のTV番組『トリビアの泉』(フジテレビ系)で取り上げられるなど、今でこそ広く知られるようになった東京タワーと戦車をめぐるエピソードですが、東京タワー公式から積極的な情報発信は見られません。 産経新聞社の創業者で東京タワーの建設を主導した前田久吉さんの1959年の著書『東京タワー物語』(東京書房)。こちらも確認しましたが、米軍戦車の鉄材を使ったという記述はありませんでした。 東京タワーの完成は、太平洋戦争の終結から13年後。「世界一高い電波塔」として誕生した東京タワーは、日本の戦後復興のシンボルでした。その建材として、米軍の兵器が使われているということは公言しにくかったのかもしれませんね。
安藤健二(BuzzFeed Japan)