「資本主義」は社会の発展に不可欠な必要悪?仮面ライダーと対峙するショッカー戦闘員が妙に貧弱に見えるワケ(後編)
人気作家のさくら剛さんが、世の中の「主義・思想」をユーモアたっぷりに、そして皮肉たっぷりにご紹介する哲学・超入門エッセイ。価値観が多様化する現代、人生というダンジョンに地図もなく放り出された私たちは、これからどう生きるべきか? *本記事はさくら剛氏の著書『君たちはどの主義で生きるか ~バカバカしい例え話でめぐる世の中の主義・思想』(ウェッジ)の一部を抜粋・修正したものです。【前編】からの続き 「集団の中にいると無意識に自分の力をセーブしてしまう現象」を、社会的手抜きと呼びます。ポイントは、「本人は毎回100%の力でやっているつもりなのに、『自分は集団の中にいる』と感じると無意識のうちに手抜きをしてしまう」という点でした。その人の「本気の全力」が、「集団に属している」という環境があるだけで(環境がなくとも本人がそう思い込んでいるだけで)、パフォーマンスにまで低下してしまうのです。 なぜ社会的手抜きが発生するか? というと、 1.自分1人だけが良いパフォーマンスを見せても全体の成果に大きく影響するわけではない 2.よって、集団として評価される場では自分だけ頑張っても貢献に見合った報酬が期待できない 3.「他者の存在を意識する」という心の動きが集中力、没頭力を鈍らせる 4.「自分がやらなくてもきっと誰かがやるだろう」という思いにより個々の責任感が薄れる(この部分は特に「傍観者効果」とも呼ばれます) などの要因が挙げられます。 女性はあまりピンと来ないかもしれませんが、仮面ライダーなんかを見ていると、ライダーが怪人と戦う前に前座として下級戦闘員がワラワラと沸いて来ますよね。正規の怪人に先んじて大量のショッカー戦闘員が登場し、あっという間になぎ倒されて退場して行きます。 あの集団が妙に貧弱なのは、常に数十人単位で行動するため「自分だけ頑張ったところで全体の力を大きく上げられるわけではない」「よって自分だけ良いパフォーマンスを見せても見返りは少なそうだ」「戦闘員が多すぎて邪魔でうまく動けない」「自分がやらなくても誰かがライダーを倒すだろう」などの心理が、無意識のうちに働くからではないでしょうか。悪の組織に所属するくらいだから本来一人一人はそこそこ腕に自信のあるワルなのでしょうが、そのように激しい社会的手抜きが発生する結果、集団戦闘員となった場合にはライダーのパンチ1発でやられるレベルにまで弱体化してしまっているのでしょう。
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