「エグい」いじめ耐えた 売れっ子作家・燃え殻がつかんだ生きる意味 #今つらいあなたへ
サラリーマンを続けながらTwitterで有名になり、小説を発表する前から、すでにそのペンネームは広く知れ渡っていた作家・燃え殻。小学生の頃に壮絶ないじめを体験し、「生きているのが申し訳なかった」日々。卒業した専門学校はすでに廃校、工場勤務を経て、テレビ業界の隅っこから対岸に残るバブルの気配を見つめていた------。順風満帆とはいえない半生を送った一人の男は、いかにして生きる意味を獲得していったのか。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル特集編集部)
“エグい”いじめ遭った小中学校「将来の夢なんてぜいたく」
SNSから生まれた文筆家の中でも、特別な存在感を放つ“燃え殻”。処女小説はネットフリックスで映画化され、上梓されたばかりの二作目の小説も、PVに仲野太賀が出演するなど、大きな話題を集めた。 そんな売れっ子が言う、「僕、何にもできなかったんですよ」と。 「全然、全然ですよ。運動も、勉強もそんなできないし、友達もいなかった。モテたくて学級新聞を作って4コマ漫画とか描いてたんですけど、すぐ不良グループに破られたりしてました。大人になっても、2か月前に同窓会があったことをFacebookで知って、遠い目で、ああそうなんだな、みたいな(笑)」
本人曰く、さえない青春時代。 「将来の夢なんて、そんな贅沢なもの考えたこともなかったですね」 神奈川で過ごした小学生時代には、ひどいいじめにも遭っていた。 「まあ、エグいいじめでした。僕、幼稚園の終わりに病気になって、高熱が出て、髪が抜けたんです。髪も眉毛も、まつ毛も抜けました。病名はいまもわからないんですが。しばらく生えなくて、小3くらいで少し生えたかな。その後も円形脱毛症になり、今でも抜けます。当時は自分でも鏡を見て怖くなるような見た目でね、恰好のいじめの標的。毎日、壮絶でした。無視や暴力、トイレでも嫌がらせされたり、亡くなった人みたいに机の上に花瓶を置かれたり。教室に入っていくのが怖くてたまらなかった」 大人にも失望させられた、と燃え殻は続ける。 「中学年のころ合唱コンクールがあって、両親も見に来てました。舞台の上でアイウエオ順に並んだら、僕がちょうど真ん中になって。でも、幕が開く直前に担任が僕を一番後ろにして、段にも乗せなかったんですよ。外見が変なヤツが真ん中にいたら恥ずかしかったのか、僕に対する配慮なのか、よくわからない。とにかく僕は、見えない場所に置かれたんです。クラスメイトの足の間から、母親が僕を探してる姿が見えました。……なんだか、自分が生きていることが、申し訳なくて。みっともないな、申し訳ないな、僕に何ができるんだろう、何もないよなって。でもクラスメイトからしたら、僕がそこにいることは当たり前で」