「エグい」いじめ耐えた 売れっ子作家・燃え殻がつかんだ生きる意味 #今つらいあなたへ
垣間見たミュージシャンや作家 気づいた「生きていいんだ」
これから進路を決めようとしている若い人たちは、物心ついた頃からSNSがあった世代だ。何かアドバイスがあるとしたら? そう問うと、「僕が今学生だったら、大変だっただろうな」と苦笑しつつ、ゆっくりと答えた。 「僕らの頃って、大学に行くか、そうでなければ専門学校か就職ってルートが決められていたけど、今はそこに、グラデーションがある気がする。選択肢が常にたくさんある。それこそSNSで何かを知ることも選択肢の一つ。急にルールを変えられたりすることもあると思うけど、『いろんな人が生きていて、それぞれに意見がある』ことを知っていることが重要なんじゃないかと思いますね。やることを一つに絞らなくても、自分の中で二本、三本掛け持っておくことが、備えになるんじゃないかな」 世の中、強い人だけが生き残るわけではない。いろんな人間が、それぞれのリズムで生きている。それを体現しているミュージシャンや作家の姿を垣間見ることで「生きていていいんだ」と思えた、と言う。順風満帆とはいえない自身の半生も、それを見た誰かの役に立つかもしれない。 「最強アスリートじゃないと仕事がありません、っていう世界だったら、絶望するしかないよね。でも、そうじゃない。苦肉の策であれこれいろいろ集めて、それでどうにか食ってるわ、みたいな、そんな誰かの暮らしぶりを見ていると、力が湧くんですよ。そこにいてよし、って言われたような気がする。たくさん矢が飛んできて、そのたびにウッてなるんですけど、僕を含めてSNSって中途半端なヤツがいっぱいいて、そいつらが生き延びて、税金まで払っちゃってる。こいつにできるなら、自分にもできるだろって、そんな風に思ってくれたら嬉しいですけど」
--- 燃え殻(もえがら) 1973年生まれ。作家、エッセイスト、テレビ美術制作会社社員。WEBで配信された初の小説は連載中から話題となり、デビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』がベストセラーに。同作は2021年秋、Netflixにて森山未來主演で映画化される。著書に『すべて忘れてしまうから』『夢に迷って、タクシーを呼んだ』など。小説として二作目となる『これはただの夏』が発売されたばかり。