テーマカラーを持つ、あえて不揃いにする...フランス流「自分軸のある」センスの磨き方
服のサイズは自分に似合っているかを1㎝単位でこだわりぬく
ある調香師さんが新作の香りを発表したと聞きつけて、早速お店へ向かいました。 いつも心地よい香りに包まれている店内。ブロンドヘアをポニーテールにまとめて、キリッとした表情のマダムが、新作の特徴について丁寧に説明してくれました。「これは絶対ほしい!」と衝動買いしそうになった私に、彼女はすかさず提案します。 「手の甲につけてみますね。今日はすぐ買わないで。あなたが身につけた香りの変化を観察して、気に入ったらまた来店してくださいね」 「1回目の訪問で買わせない」というこのお店の方針にはびっくり。それと同時に、「自分に合っているか」を吟味するフランス人の「香り選び」の奥深さについても教えてもらいました。 そのこだわりは、服のサイズにも表れています。 あるとき、ネットで購入したボトムスが長すぎて、家の近くのお直し屋さんに相談しました。 とても小さなお店で、普段はその存在も気づかなかったほど。緊張しつつも思い切って入店しました。シャンソンをBGMとする店内には、おしゃれなマダムがひとり。ヴィンテージのパンツスーツを着こなし、首にメジャーをかけ、丁寧に対応してくれました。 「たった1センチでもお直ししますよ。あなたのベストサイズを見つけましょう」。 彼女の話によると、このお店には、私のような買い物に失敗した人だけでなく、既製品を数センチだけお直しするお客さんも多く来店するとのこと。 洋服に関しては「自分の体型が変化したから……」と妥協することが多かったのですが、今は、ちょっとサイズが違うなと感じたら彼女に相談しています。
毎朝のコーヒーカップ選びは、直感を磨くトレーニング
古い物を大切にする、完璧を目指さない、そして不完全でも美しいと教えてくれたのはフランスの家族です。 例えば、ペアじゃないカップ、不揃いなデザインの椅子で囲むダイニングテーブル、時には道端で拾った物なんかも取り入れる……。 有名なインテリア雑誌に掲載されるような、洗練された物とは少し違うかもしれない。けれど、このタイプの人たちは、自分の「好き」を誰よりも知っていて、とことん向き合い、大切にしている。そんな空間には、型にはまらない発想があると感じるのです。 まさに「お気に入りに囲まれた暮らし」ですね。 私が住むフランスの都市・リヨンでは、毎年9月に「Tupiniers du Vieux-Lyon」という陶芸市が開催されます。カップや器などの日常使いできるものから、花瓶やオブジェなどの大きな作品まで、作家さんそれぞれの表現方法に出会える刺激的なイベントです。 そんな陶芸市に訪れた際、ある作家さんのスタンドで、たまたま横にいたマダムの「コーヒーカップは、毎朝お気に入りを一客選ぶの。直感を磨くトレーニングよ」という一言で、その場の会話が盛り上がりました。 そして感覚を研ぎ澄ませる日々のトレーニングがあるからこそ、多数の作品を前にしても迷わず「今年の一客」を選べる。このような凛とした姿が印象的でした。 私の義母も、陶芸家の作品を集めるのが趣味のひとつ。棚にはバカンスの旅先で出会ったカップやサラダボウルがあります。そんな旅の思い出のシェアも素敵ですよね。